フェルナンデス自身がチームに溶け込むのに中断期間は必要なかったが、スールシャール監督が、あらゆる役割を任せていたポグバの仕事を整理し、チームを変えるのには必要な時間だった。中断明けからは明らかにビルドアップが目立つようになり、カウンター主体のユナイテッド相手に引いて守ってくる相手にも勝てるようになった。

 ミランにステファノ・ピオリ監督がやってきたのは、2019年の10月。マルコ・ジャンパオロ監督の下で13位に低迷していたチームの新指揮官となったピオリ監督だったが、なかなかチームを立て直すことができなかった。

 その様子を見たフロントは早々に新監督候補としてラルフ・ラングニックと接触していたが、偶然得た3か月の中断期間が全てを変えた。この中断期間で自分の戦術をチームに落とし込んだピオリ監督は9勝3分で6位に滑り込み、ヨーロッパリーグの出場権を獲得して続投を勝ち取った。

 フランク・ケシエが「戦術を理解するのに時間がかかった」と発言したように、途中就任したピオリ監督が自分のやり方をチームに反映させるには時間が必要だった。

 ピオリ監督は、運動量を求めて縦に速いスタイルをベースに、相手チーム次第で試合毎だけでなく試合中にも柔軟に戦術を変える。多様なやり方を併用することになるので、選手は全てを理解するのに時間がかかる。

 ただし、選手を制約まみれにして戦術に縛るわけではない。ジャンパオロ監督のサッカーはポジショニングの徹底やプレーの制限があり、それで結果が出ないことで選手はストレスを溜め込んでいた。

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