ひとつは、正しい守備の文化が根づいていないということ。
先に述べたように、タックルは最終手段。敵と味方の状況をしっかりと把握して繰り出さなければならない。
私たちが改めて認識しなければいけないのは、タックルなしで状況を解決できるのがいい選手ということだ。タチの悪い客引きのように絶妙な距離を保って下がり、味方の戻りを待つ。これくらいの判断と動きができなければ、プロを名乗ってはいけない。
もうひとつ、メディアの姿勢も見逃せない。
これは自戒の念を込めて書くが、私たちメディアは決めた選手、勝ったチームを褒めるだけの“敵をつくらない”報道に傾きがちだ。“褒めればいい報道”に慣れると、記者は思考停止に陥ってミスが見えなくなってしまう。指摘されないミスは存在しないに等しい。
ヨーロッパに渡った日本人選手が適応に苦しむのは、ヨーロッパでは初歩的なミスが皆無に近いからだ。
こうしたミスがなくならない限り、世界との差はいつまで経っても縮まらないだろう。