■3人から一挙に5人へ
30年近く続いた「2人交代制」に変化が訪れたのは1994年のことだった。アメリカで開催されるワールドカップに先立ち、IFABは2人の交代に加え、3人目としてGKの交代も認めることにした。GKが負傷することを懸念して、多くのチームが「2枚目」のカードを切ることをためらっていたからだ。このルールは、翌年にポジションにかかわらず3人の交代を認めるものに変更された。これによって、監督たちの采配は大胆になった。交代選手の成否は、現代のサッカーにとって勝敗の重大な分岐点だ。
1958年から30年近くかけて「2人」から「3人」に増えた交代枠。それがその20年後には、もうひとり許可された。ただしこの「4人目」は「延長戦にはいった場合」である。2016年にIFABがこの新ルールの実験を行うことを承認、さっそくフランスで開催された欧州選手権でこのルールが採用された。
ワールドカップでも、2018年ロシア大会で「延長4人目」が採用された。そして「4人目」の第1号は、やはり(旧ソ連の)ロシアだった。スペインとのラウンド16の延長前半7分、ロシアのスタニスラフ・チェフチェソフ監督は、4人目の交代としてMFダレル・クジャエフに代えてアレクサンドル・エロヒンを送り出した。
そしてことし、「コロナ禍」という特殊状況のなかで、5人交代の暫定ルールができた。「延長で4人目」という通常のリーグ戦などでは起こらない状況を除けば、「3人制」から「5人制」へと、一挙に増えたことになる。