日本列島の年末年始は“カップ戦の季節”である。リーグ戦をたっぷり楽しんだあとも、存分にサッカー観戦三昧の日々を送ることができるスケジュールになっている。まずは天皇杯を中心に、見どころを解説しよう。
■コロナを乗り切るサッカーとは
ところで、J1優勝を決めた川崎はしっかりとパスをつないでビルドアップするテクニカルなサッカーで圧倒的な攻撃力と守備力を兼ね備えたJリーグ史上に残る強さを発揮した。また、J2でリードしている徳島はリカルド・ロドリゲス監督が時間をかけて築き上げた完成度の高いチームで、可変システムを自在に使いこなす高度なサッカーを見せてくれている。
だが、川崎、徳島以外の各カテゴリーの上位争いをしているチームはリアリスティックなスタイルのチームが多いように感じる。
J2上位陣はいずれもハードワークをベースとしたチームだし、J3でもしっかりとした守備を構築したチームが優勝/昇格争いを繰り広げている印象が強い。ヨーロッパの2部リーグ、3部リーグでもよく目にする“下部リーグらしい”サッカーとでも言ったらいいだろうか……。
長い中断を経て6月~7月に再開されてからは超過密日程になってしまった2020年のリーグ戦。それが“リアリスト優位”につながったのだろう。
たとえば、昨年優勝の横浜F・マリノスのようなボールも人も走るサッカーはかなりの運動量が要求されるだけに、猛暑の中での過密日程では力を発揮しにくかったのだろう。カタールで行われた短期集中のACLでも、横浜FMは水原三星戦の後半にはすっかり足が止まって完敗を喫してしまった(余談だが、ほとんどメンバーを変えずに戦って準々決勝のヴィッセル神戸戦でも退場で1人少なくなったまま120分間を走り切った水原の選手たちは敬服に値する)。
後方でしっかり構えることで運動量を減らし、ボールを奪ってからのカウンターで得点を狙う……。それが、新型コロナウイルスの拡大という災厄に見舞われた2020年シーズンを乗り切るための正しい対処法だったようだ。
そうした全般的な傾向の中で、テクニックを生かした攻撃サッカー、要するに人よりボールを動かすことによって困難な日程を乗り切った川崎は賞賛される。過密日程や5人交代制といった今シーズンの特別なレギュレーションが川崎有利に働いたのは事実だが、そうしたサッカー・スタイルを築き上げ、また新加入選手を素早くチームになじませながら分厚い選手層を実現したところが川崎を優勝に導いた。