日本代表は今井恭司カメラマン

 マルメがあるスウェーデンの南部はスコーネ地方というところです。地理的にも文化的にもデンマークに近いそうです。スウェーデンの国旗はご存じのように青地に黄色のスカンジナビア十字が描かれていますし、デンマーク国旗は赤地に白十字ですよね。スコーネの旗は、両国旗を合わせたような「赤地に黄十字」なのです。CLやELにマルメFFが出場する試合ではスタンドに必ずこの旗が見えるはずです。

 ツアーではまずクリスティアンスタード市を見物(発音は早口で「クリチャンスタッ」。最初の「ク」最後の「タッ」を強く発音します)。昼食は海岸にあるレストランでの「鰻尽くし」でした。鰻は、世界中で結構食べることのできる魚で、もちろん蒲焼はありませんが、いろいろな料理が出てきました。

 食事が済むと「鰻つかみ大会」。大きな樽にいっぱい鰻が入っていて、制限時間内に何匹つかめるかという国別対抗競技でしたが、これは難しくて誰も成功しなかったように記憶しています。

 その後は各国代表ののど自慢大会で、日本からはカメラマンの今井恭司さんが出場しました。僕は「絶対無音感」なので固く固く辞退しました。

 そして、最後に海岸沿いのオーフスにあるアブソルート・ウォッカの工場見学に連れていかれました。

 薬品の瓶に似せたシンプルな形状の透明なボトルに骨太のフォントで「ABSOLUT」と書いてあるあのウォッカです。世界中の空港の免税品店には必ず置いてあります。製造しているV&S社は国営企業で、アブソルートは貴重な外貨獲得の手段ともなっているわけです。19世紀末からこのオーフスで製造されています。

 発酵樽や蒸留装置などを型どおりに見学。その後は会議室で会社の概要や製品などの説明がありました。そして、最後に係員が「ご質問は?」と尋ねたのですが、誰も手を挙げません。再び、「ご質問があれば、どうぞご遠慮なく……」。

 やはり、誰も手を挙げず、なんか気まずい雰囲気です。

 サッカー以外の話題について英語で質問するのは億劫だったのですが、「それでは」と思って手を挙げました。

「スウェーデンではアルコール抑制政策をとっていてビールもアルコール度数が低いじゃないですか? それなのにアルコールが強い(40%)製品を作って世界中に輸出するというのはダブルスタンダードなんじゃないですか?」

 僕がこの質問をしたら、各国の記者たちが急に「ああでもない、こうでもない」と勝手な意見をぶつけ合い始めました。きっとアルコール問題は彼らの切実な関心事だったのでしょう。で、説明会は紛糾してしまったのでした……。

 説明会を紛糾させてしまったお詫びとして、僕が「ABSOLUT」のボトルを買って帰ったのは当然のことです。

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