世界の銘酒を訪ねるアルコール三番勝負の2番目はスウェーデン篇。アイリッシュ・ウイスキーに続いて、ウォッカでひと酔いです。ダブリン篇より、アルコール度数が上がってきました。
■スウェーデンではアルコール抑制政策
1992年のヨーロッパ選手権(EURO92)はスウェーデンで開催されました。2年前のイタリア・ワールドカップ前後から旧ユーゴスラビア連邦ではセルビア、クロアチアなど共和国同士の対立が深まって内戦が勃発。国連安保理の制裁決議に基づいてスポーツ交流が禁止され、すでに予選を勝ち抜いていたイビツァ・オシム監督のユーゴスラビア代表の出場が取り消されて代わりに予選2位だったデンマークに出場権が与えられます。
すでに休暇に入っていた同国代表選手たちが急遽招集され、そのデンマーク代表がミシェル・プラティニ監督率いるフランスやライカールト、クーマン、グーリット、ファンバステン、さらに23歳のベルカンプを擁するオランダ、そして初めて東西統一チームを編成したドイツを連破して初優勝を遂げてしまったサプライズの大会となりました。
僕は、この大会は開幕戦からではなく、2試合目のフランス対イングランド戦から観戦しました。場所はスウェーデン南部の都市マルメでした。
マルメに行くには隣国デンマークの首都コペンハーゲンにあるカストルプ空港が便利です。マルメは空港のあるアマー島からエーレスンド海峡をはさんで対岸にあるからです。今では橋が架かっていて空港駅から電車に乗ればすぐにマルメに着きますが、当時はフェリーに乗ってマルメに入ったものです。
北欧諸国はどこも大変に奇麗で治安も良いのですが、最大の問題は物価が(為替レートの関係で)高いこと。そして、スウェーデンではアルコールの消費が規制されていました。普通に売っているビールはアルコールが2・25%以下のもの。3・5%以上の強いビールは許可を受けた店だけで飲めます。ビールを注文するといちいち「ストロングでっか?」と聞かれます。
北欧諸国はもともと強い蒸留酒の消費量が多かったので、スウェーデン政府がこうした規制を実施しているようです。まあ、飲みすぎが体に悪いということは(身にしみて)知ってますが……。
さて、マルメ滞在中にEUROの組織委員会主催で報道陣向けのメディアツアーが行われました。
最近のワールドカップやEUROではテレビ放映のために毎日どこかで試合があるので、移動しながら試合を見続けなければなりません(別に毎日見なくても誰かに怒られるわけじゃないんですが……)。しかし、昔は試合がなくてゆっくりできる日が結構ありました。そんな日にメディアツアーがあれば、よく参加したものです。地元組織の主催なので珍しいところに連れて行ってもらえます。地元にとっては参加した記者がその体験を記事にしてくれれば観光宣伝になるというわけです。
この日のツアーのテーマは「鰻とウォッカ」でした。