■ジョン・バーリーという写真家
「その写真を撮影した写真家の名前はジョン・バーリー。彼は『デイリー・ミラー』紙の仕事をしており、カラー写真を撮影するためにメキシコに送られた。私とジョンは長い知り合いだった。彼の息子のアンドリューも知っており、彼はジョンと同じようにリーズという町で仕事をしている。もし君が良質なプリントが欲しいのなら、アンドリューに頼んであげよう。もちろんそれは『裏焼き』ではないよ。それから、NFM(ナショナル・フットボール・ミュージアム)にもこの問題を知らせておくよ」
「長い知り合いだった」という部分から、ジョン・バーリーがすでに他界していることを知るべきだったが、彼がちょうど2年前、2010年の9月に亡くなったことは、ピーターのメールで知った撮影者の名をネットで検索した結果わかったことだった。
彼はついでに「裏焼き」のことを英語では「flopped」というのだということも教えてくれた(どんな辞書にも出ていない使い方だ)。「フロップ」というのは、「ばたばたする」という意味で、ドクター中松が自分の発明だと主張している「フロッピーディスク」の名称にも使われている言葉だ。
私はピーターに感謝のメールを送るとともに、アンドリューに頼んでもらうことは丁重に辞退した。そして「いつかこの話を書きたい」と返信した。「いつか」としたのは、そのときには、いくら探しても、あの1970年の秋に奇跡的に手に入れた雑誌を、私の事務所の本と雑誌・資料の山のなかから発掘することができなかったからだ。「あそこにある」と思っていた場所ではまったく見つけられず、いくら考えても他の可能性が思い浮かばず、「捨ててしまったのかもしれない」と、暗澹たる気分だったのだ。