ベガルタ仙台が“17試合勝利なし”という長い長いトンネルに入っていた中でも、高く評価され続けた選手がいる。ゴールキーパーのヤクブ・スウォビィクだ。17試合中15試合でゴールマウスを任されていた彼は、毎試合何度もビッグセーブを見せ、3回の完封という結果も残したが、勝利は舞い込まなかった。
スタジアムにはいつもスウォビィクの声が響いていた。「左!」「集中!」「ここここ!」コーチングも檄も日本語で的確に行い、チームを鼓舞し続けていた。どんなにふがいないミスを目の当たりにしても、どんなに失点をしても、自身のプレーが報われないことをこれっぽっちも露わにせず、声を飛ばし続け、再びビッグセーブをしてみせた。
チームの勝利のために全てを出し続けるその姿が、これだけ勝てなくても高く評価されるのは当然だった。
この試合でも、ガンバ大阪サポーターの太鼓と手拍子の音にかき消されることなく、その声はよく通っていた。
長沢駿のハットトリックと柳貴博のダメ押しゴールで4-0とし、ベガルタの18試合ぶりの勝利を告げる笛が響くと、スウォビィクは控え目なガッツポーズと笑顔を見せた。