■日本代表監督に求められる重要な資質
公式会見の場で、森保監督はどんなときにも最初にいろいろな人への感謝を語る。会心の試合で勝利を収めたときにも、多くのことがうまく運ばず敗れたときも、その言葉だけでなく口調も変わることがない。だがそれは彼のポーズでも、単なるスタイルでもない。何よりも大事なことと心から信じ、常に念頭にあることだから、何をさしおいても感謝を口にするのだ。感謝の気持ちが謙虚な姿勢を生み、そしてチームのモラルにつながる。
もちろん、彼は、試合や対戦相手を分析し、どうしたらうまく行くのかプランをたてる非常に優秀な頭脳をもち、それを選手たちに的確に伝える言葉の力を備えている。そして必要なときには「賭け」に出る、西野監督のような胆力も持ち合わせている。しかし監督としての何よりも大きな資質は、選手と対等に向かいあい、相手へのリスペクトを示しつつ、いつの間にか森保監督自身の「哲学」へと選手たちを引き込む人間としての魅力、そして力だ。
選手たちには、それぞれのクラブでの立場や状況があり、それが代表での活動に大きな影響を与える。クラブの監督と違い、代表監督は年間を通じて週に6日間選手と接することなどできない。特別なことがなければ年に5回、計50日にも満たない活動のなかでチームの哲学を徹底し、まるでクラブチームのような集団にまとめ上げることが求められる日本代表チーム監督を任せるに足る人は、現在、森保一以外にはいない。
オランダを舞台にした10月の活動で、日本代表は森保監督が約束したとおりの「チーム一丸」のサッカーを180分間にわたって貫いてくれた。11月、オーストリアのグラーツで行われるパナマ戦(13日)とメキシコ戦(17日)では、10月の試合以上の質の高い攻撃が見られるはずだ。そしてチーム一丸となって最後まで勝利のために戦う姿が、また日本のファンに力を与えるはずだ。