■代表なのに、チームがまとまったり、ばらばらになったり
充実した戦力をもっていたために選手たちがまとまらず、日本協会も準備でミスをして失敗したのが2006年と2014年。大会前の状況が悪く、期待されていないときに選手たちが「なにくそ」と一丸となり、監督の下でやるべきことをやり抜いて好成績につなげたのが2010年と2018年だった。もし2006年と2014年にチームが完全に集中し、準備もうまくいってひとつにまとまっていたらと、考えても仕方のないことが頭をよぎってしまうのは私だけだろうか。
こう見てくれば、なぜ2022年カタール大会の日本代表監督に森保一がふさわしいのか、理解してもらえるのではないだろうか。1大会おきにチームがまとまったり、ばらばらになるようなことが起こるのを看過することはできない。2022年こそ、充実した戦力とチーム一丸のサッカーを両立させ、ワールドカップベスト8へ、さらにその先へと、日本のサッカーを前進させなければならない。そうした仕事ができそうなのが、森保監督なのだ。
2018年の秋に自ら証明したように、森保監督は若い選手の才能を見抜いて流れるような攻撃サッカーをつくる能力がある。そして何よりも、チームのモラル、勝利のために一丸となって最後まで全力で戦うことをチームの基本とする監督である。そのモラルは、西野監督の下で戦った2018年ワールドカップから継続されているものではあるが、当たり前に存在することではない。選手というのは、ともすればそれぞれ勝手に自分の目標に向かいがちなものだからだ。ザッケローニ監督の失敗は、日本代表というチームには何も言わなくても常にそのモラルがあると思い込んでいたことにある。
そうしたモラルが大きな意味をもつのは、もちろん日本代表だけではない。東京オリンピックを目指すチームにとっても、ベースとして不可欠なものだ。東京大会は日本中が注目することもあって重要度はこれまでのオリンピックにも増して高いが、それでも、「日本代表、ワールドカップにつながる経験を積む」ことが最も重要な要素であることを忘れてはならない。オリンピックという舞台でモラルの高さを示せない選手が、ワールドカップで活躍できるはずなどない。