雨が降る日産スタジアムで、ベガルタ仙台は反撃の烽火を上げた。
わずか3日前のFC東京戦とはまったく異なる守備を用意し、横浜Mのつなぎを寸断。高い位置でボールを奪うと、それをシュートやクロスにつなげていった。そして、10分に先制点を挙げる。この先制点までに、FWゲデスは3度も相手陣内でボールを奪っている。味の素スタジアムの消極的な仙台の姿は、どこにもなかった。
しかし、FC東京戦とこの横浜Mでの仙台の最大の違いは、守備のアグレッシブさではなかった。チームの“声掛け”だ。FC東京戦では、試合中、仙台の選手が声を掛け合うことはほとんどなかった。後半途中から出場したMF兵藤慎剛が、個人個人に声を掛けたほか、「ここから、ここから!」「流れが来てるよ」などとチームを鼓舞する言葉を発した以外、声を出す選手はほとんどなかった。
観客数を制限せざるを得ない状況によって、映像にも声が入るようになった。しかし、それはほんの一部に過ぎない。味の素スタジアムにおける仙台の選手は、とにかく声で伝え合うことがなかった。それが、横浜Mでは違うチームかのように声を出していた。
特に声を出していたのが、GK小畑裕馬だ。小畑はユースから今年昇格したばかりの18歳だ。しかし、横浜Mより前に5試合のリーグ戦にフル出場している有望株で、9月14~16日のU-19日本代表合宿にも呼ばれていた。この小畑が、先輩にも一切物おじすることなく、指示を出していた。
「柳、こっち向け!」
「ミチ、もっとボールに行け! ボール、ボール!!」
「彰吾、もっと中だ!」
最後尾だからこそ気になる点を、とにかく声にした。さらに、「プライド!!」とチームに対する激を発したかと思えば、時に、「ウオー!!」などと勢いだけの声も出した。これには、横浜Mのサポーターが思わず笑い出してしまったほどだ。