■「常に緊張感があって楽しい」
――そういう相手と対戦しても、ホーム&アウェイのリーグ戦で2度目に会った時には感覚が変わっていることはありませんか。
「それはありますね。試合にたくさん出させてもらって積み重ねをすることによって、足の伸びや『ここでスライディングしたらPKを取られるな』という感覚が変わってきます。実際、試合に出るようになって最初の数試合では、何枚かイエローをもらっていますし、PKも取られているんですけど、徐々に慣れていく感覚はありました。ファウルになるとわかっていても行かなければいけないことはありますが、自分で『行ける!』と思ったのにファウルを取られることはなくなりました」
自身が最後の砦だと認識しているという。そう感じるのは、ヨーロッパで戦うにあたって必要なものを体感しているからかもしれない。
――ヨーロッパに来て感じる、評価の基準の日本との違いはありますか。
「守備でがっつり戦うこと、特に後ろの選手はそれができないと使ってもらえませんね。そこは技術云々よりも一番大事なところじゃないかなと思います」
――プレーの強度も随分違うと思います。
「強い選手が多いので、常に思い切り当たりにいかないといけません。また、スピードのある選手には早めに準備しておかないと、1本のパスで裏に抜けられるという怖さもあります。そういう緊張感が常にありますね。ゲーム展開が日本よりも早いので、ゆっくり落ち着いている時間はないというか、バタバタしている感じで忙しいんですが、やっていて楽しいです。自分よりでかくて強い選手に、どうやって勝とうかと考えるのが楽しい。そういう充実感がありますね」
――大きな相手を抑える方法も覚えてきましたか。
「まだ空中戦で負けることもあるし、もっと勝たないといけないなと思う部分は多いのですが、やりながら意識するのは相手が嫌がるようにプレーすること。対等に体をぶつけても負けてしまうなら、相手の嫌なタイミングで体をぶつけるとか。そういうところは意識してやっていますね」
昨季最終戦のPSV戦では、マレンは負傷のために出場しなかった。だが、板倉が自身の成長を確かめるPSVとの再戦は、すぐにやってくる。9月13日、2020-21シーズン初戦。フローニンゲンは、ホームにPSVを迎える。
いたくら・こう 1997年1月27日、神奈川県生まれ。小学校4年生で、立ち上げられたU-12チームに1期生として加入して以降、トップチームまで川崎フロンターレ一筋で育った。2018年には、期限付きでベガルタ仙台へ移籍。2019年1月には、イングランドの世界的名門マンチェスター・シティへと電撃移籍。すぐにオランダのフローニンゲンへ期限付き移籍し、昨季は年間を通して主力としてプレー。U-18から年代別日本代表に選ばれ続けており、昨年6月にはフル代表でもデビュー。来年の東京オリンピックやワールドカップでも活躍が期待されている