■酒井宏樹と室屋によるレベルアップしたポジション争い
このところ日本代表にも欠かさず招集されていた室屋だが、右サイドバックの定位置争いでは酒井宏樹(マルセイユ)の方が“レギュラー格”と思われていた。だが、フランスのリーグ・アンが新型コロナウイルス感染症の感染拡大のために中断したまま再開されなかったので、酒井は試合に出場する機会を失ってしまっていた。
「だから、秋に予定されていたワールドカップ二次予選では酒井より室屋を使うべきではないか」と僕は思っていたが、今の室屋なら、酒井と比べて実力的にまったく遜色ないレベルにあるだろう。
10月、11月に開催されるはずだったワールドカップ予選は再延期になってしまったが、日本サッカー協会は代わりに親善試合を開催する方向で調整中だという。
もし、そうした試合が組まれた場合には、長い間活動できなかった日本代表としては、いつ、どのような形で行われるのか分からない最終予選に向けての準備として、フルメンバーで戦って代表での戦いに対する共通理解を取り戻す作業をしなければならない。
その“フルメンバー”の試合では右サイドバックの位置を巡って、酒井と室屋の激しいポジション争いが当分は続くことになるのだろう。さらに、セリエAのボローニャで右サイドバックとしてプレーしていた富安健洋のサイドバックも、代表で一度はテストしておくべきだろう。また、左サイドでも長友佑都に代わる選手をさがす作業が必要になるはずで、当面は左右のサイドバックの定位置争いは面白いことになっていくだろう。
シーズン途中で主力選手が退団して海外に移籍してしまうというのは、チームとしても、あるいはJリーグとしても必ずしも望ましい状況ではないし、サポーターがそれをいつでも温かく拍手で送り出すというのも「ちょっと違うんじゃないか」とは思うが、室屋成自身にとっては、“プレーのツボ”のようなものをつかみかけたこのタイミングで海外リーグに挑戦するというのは悪い選択ではない。ぜひ、ドイツで良い経験をして、大きく成長してほしいものである。
そして、室屋が不在となったFC東京で後を継ぐと思われる中村帆高にも期待したい。
FC東京というチームは長友もそうだし、徳永悠平や太田宏介といった優れたサイドバックが在籍していたチームだ。中村帆高も、両サイドをこなせる(右が主戦場)、強いクロスを蹴ることができる素晴らしいサイドバックだ。次世代のサイドバック候補として、同じ明治大学の先輩、長友や室屋の後を追って今後のJ1リーグでは大いにその力を見せてもらいたい。