そんなドリアンはフットボーラーとして流浪の人生を歩んでいる。北マケドニア共和国出身のバブンスキーは早い段階から大型ストライカーとして頭角を現し、2011年にレアル・マドリーのカンテラに入団。2015年までマドリーのカンテラで過ごした後、2部B(スペイン3部)のフエンラブラダで戦い、スロベニア、日本と多様な文化とプレースタイルを吸収しながらキャリアを積み上げてきた。スペイン、スロベニア、日本という3カ国について、また各国のサッカーについて、彼の興味深い言葉が紡がれた。
――バブンスキー選手が日本に来た経緯やきっかけについて、聞かせてください。
「兄(横浜F・マリノスと大宮アルディージャでプレーしたダビド・バブンスキー)を訪ねるために日本に来たのが、きっかけだったね。練習や試合を見て、共感する部分がたくさんあった。父もいたことがあるから、日本に行くというのは興味深い選択肢だと思ったんだ」
――日本でプレーする難しさは?
「Jリーグに適応するのは簡単ではなかったよ。時間が経つにつれ、どうやって戦うべきかを少しずつ理解していったけれどね。最初に面食らったのは、日本の暑さだ。僕が来たのは夏だったんだけど、湿気と気温がヨーロッパのものと違って、きつかった」
「日本の選手の特徴や傾向を、日々の練習で少しずつ、つかんでいったんだ。日本では、英語を話せる選手も少ないから苦労したところはある。でも、チームメートはすごく僕を助けようとしてくれたし、それは僕の適応を容易にしてくれたと思う」
――日本とスペインでプレーして、感じる違いというのは何でしょうか?
「スペインでは、ピッチ上で選手同士がものすごくコミュニケーションを取る。そして、それは監督が求めることでもあるね。なぜかと言えば、試合中に味方同士が頻繁にコミュニケーションするというのがチームが機能するために非常に重要だという考えがあるからなんだ」
「日本でも、数年前と比べて、その点は改善されてきていると感じる。J1、J2、J3、すべてのリーグのレベルが上がっているし、ヨーロッパのトップレベルの要求に応じられるように良い仕事がされているよ」
――日本の生活は、どうですか?
「日本の生活水準は世界でもトップレベルだと思う。すごく快適に過ごせているし、幸せを感じているよ。いまの日本は、あらゆる事柄に対応する準備ができていると思う。僕のように外国から来た人間にとっても、日本人にとっても、生活の質は高く保証されている。僕はこの数年の経験を通じて、誰に対しても日本での生活をオススメできるよ」
――外国人選手の中には、家からあまり出たがらない選手もいます。
「僕は生活に適応していくことは必要だと考えている。日本に限らず、すべての国でね。だから散歩に出掛けたり、買い物に行ったり、何でもする。言葉の問題はあるけど、日本のサービスは本当に充実しているし、すごく楽しんでいるよ」
――日本語は、どうですか?
「(日本語で)マダムズカシイデス(笑)」
――これまで日本でプレーしてきて、試合を見た中で、あるいは対戦した中で、スペインの2部以上でプレーできそうな選手はいますか?
「スペインに挑戦できそうな選手は、たくさんいるよ。日本の選手は技術面・戦術面で優れているし、フィジカルの面では走力が武器になる。そして、何より規律正しい。J1やJ2でプレーしている選手の中に、ヨーロッパで活躍できそうな選手は多くいる。課題があるとすれば、ピッチ上での思考力かもしれない。ヨーロッパでは、試合中に問題を解決するため、頭の回転を速くしなければいけない。J1のいくつかのチームは非常に良いプレーを見せているし、例えば川崎フロンターレには、向こうでもプレーできそうな選手が何人かいるように思う」
――スペインの2部BとJ2の待遇は違うものでしょうか?
「リーグ戦のサポート、各クラブのマネジメント、スタジアム、施設、すべての面でJ2が上だと思う。2部Bのスタジアムは基本的に小さいし、プレーするのが難しい。スペインや日本の経済事情もある。それはリーグ戦やサッカー協会の財政に影響する。そして、日本のオーナーは、スペインのオーナーたちより巧みにクラブをマネジメントをしていると思う。近い将来、スペインでも経済が上向いて2部Bや3部のクラブが良くなっていくことを願っているけれどね」
――日本以外で、アジアや他の国でプレーしてみたいという気持ちはありますか?
「『この国』というのは、ないかな。まずは、町田でJ1に上がりたい。日本のトップリーグでプレーしてみたいんだ。それを経験したら、ヨーロッパに戻る、あるいは他の国でプレーするというモチベーションが出てくるかもしれない。だけど、直近の目標は町田ゼルビアでJ1に昇格することだよ」
――最後に、ファンにメッセージをお願いします。
「まず、日本のファンのみなさんに。これまで示してくれたサポートに感謝したいです。日本のサポーターの姿勢、リスペクト、愛情というのは、全世界の人たちの模範になると思っています。自チームだけではなく、対戦相手のチームにも敬意を示してくれるサポーターというのは、僕たち選手にとって、本当に有り難い存在です」
「そして、町田のサポーターのみなさんは常に僕を応援してくれています。この3年間、常に僕へのサポートを示してくれました。彼らに多くの歓喜をお届けして、恩返しできればと思っています。新型コロナウィルスの状況が落ち着いて、彼らがスタジアムに足を運べるようになり、再び一緒に勝利を喜べるように願っています」
ドリアン バブンスキー DORIAN BABUNSKI
1996年8月29日、スペイン生まれ。身長186センチ、体重77キロ。
Jリーグ初出場2017年8月26日、Jリーグ初得点2018年3月17日。
来歴 レアル・マドリー(カンテラ/スペイン)→フエンラブラダ(スペイン)→NKオリンピア・リュブリャナ(スロベニア)→NKラドムリェ(スロベニア)→FC町田ゼルビア→鹿児島ユナイテッドFC→FC町田ゼルビア