久保建英を「サッカー批評」5702字!(1)“自分らしさ”ではない「殺すドリブル」の画像
久保建英(マジョルカ)のドリブル 2020年7月3日アトレティコ・マドリー戦  写真:ムツ・カワモリ/アフロ
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19歳の日本人選手の周囲が熱い。スペイン・リーグ下位で残留争い真っただ中のマジョルカで、久保建英がひとり気を吐いている。右サイドの位置で高い技術からチャンスを量産し、孤立してもDF網を単独ドリブルで切り裂いてシュートまでもっていく。注目が集まるのは当然だ。この期待の俊英のプレーを解析し、将来を占う。

■攻撃はすべて久保が起点

 スペインのRCDマジョルカでプレーしている久保建英の評価が急上昇している。

 レアル・マドリードからレンタル移籍中の久保だが、すでに来シーズンに向けては多くのクラブから獲得のオファーが届いているらしい。

 当初は、久保は来シーズンもスペインのラ・リーガ1部のクラブへのレンタルが確実視されており、とくにレアル・ソシエダードが有力と言われていたのだが、最近はパリ・サンジェルマンが本気で獲得に動いているようだし、さらにドルトムントやミランといったクラブの名も放送されているようだ。

 約3か月の中断後に再開されたラ・リーガでは久保は全試合に先発出場している。昨年のリーグ開幕直後にはベンチを温める時間も長かったが、現在では完全にレギュラーの座をつかんだのだ。いや、それどころか、マジョルカというチームにとって久保は欠くことのできない、替えのきかない選手という地位を築き上げている。

 つまり、マジョルカの攻撃のほとんどは久保を経由して行われるのだ。相手チームから見れば、久保さえ消してしまえばマジョルカの攻撃は怖くないのだから、当然、久保封じを考える。久保がボールを持った時には必ず複数でマークに来るのだ。

 6月30日に行われた第33節、1部残留を争うライバルのセルタとの直接対決では、これまで得点力不足と言われていたマジョルカが5ゴールを奪って大勝したが、久保はそのうち4ゴールの起点となった。久保のパスから直接ゴールにつながった「アシスト」は2つだけだったが、起点作りはすべて久保だったのだ。

 続いて、7月3日に行われたアトレティコ・マドリードとのアウェーゲームでは、このところ好調の強豪アトレティコと降格圏にとどまるマジョルカとの実力差は歴然としており、マジョルカは0対3で完敗を喫してしまう。だが、久保は単独ドリブルで何度もチャンスを作っており、この試合でもまた評価を上げたと言っていい。

 この試合、アトレティコとしてはいわゆる「谷間の試合」であり、メンバーを落とすことこそなかったが、力をセーブしながら確実に勝点3を積み重ねたい試合であり、実際、PKで先制して、さらに前半のアディショナルタイムに追加点を奪って前半のうちに勝負を決めてしまった(PKは、ファウルを受けて倒されたアルバロ・モラタ自身が蹴ったが、マジョルカのGKマノロ・レイナがこれをストップ。しかし、レイナが動くのが早かったという判定でやり直しになったもの。マジョルカにとってはかなり不運なゴールだった。格下のマジョルカにとっては、運にまで見放されてしまっては勝機はなかった)。

 ただ、そんな一方的な試合でも久保は何度もチャンスを作っていた。

 守備力に定評のあるアトレティコ。そのアトレティコが「唯一脅威となる久保を抑えよう」と複数の選手でストップを試みたが、それでも久保がボールを失う場面はほとんどなかったのだ。久保をマークしたのはマヌ・サンチェスという19歳の若い攻撃的なサイドバックだったが、久保のドリブルにはMFのコケやCBのホセ・ヒメネスなど同サイドの選手が加わって、2人がかりでマークする場面が多かったのだが、それでも久保は止められなかった。

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