■支配率89%で敗れたペップのバルサ

 私がのこのこと海外に出ていくのは、世界を知ることができるからだ。知ることができる世界には、日本も含まれる。

 ブラジルを旅すると、ブラジルのいい加減さが実態を伴って見えてくる。相対的に、私が暮らす日本がきっちりしているということも。

 サッカーについても同じ。

 セレーゾは日本サッカーの計画至上主義という課題を見抜いたが、それは彼が外からの目線を持っているからだ。

 日本サッカーの課題という点で、セレーゾの指摘は的を射ていると思う。

 というのも、敵が入り乱れる中でボールを足で扱うサッカーは、数あるスポーツの中でもっとも不確実性が高いからだ。

 このゲームにつきまとう不確実性を撲滅するには、どうすればいいか。

 ボール支配率を限りなく高めることが、効果的な方策だろう。ボールを持ちつづける間は、少なくとも失点しない。ならば、ボールを持ち続ける時間を限りなく延ばせばいいのではないか。失点しなければ負けることはない。

 だがサッカーというゲームは、一筋縄ではいかない。

 サッカー史に残る美しいチーム、ペップ・グアルディオラのバルセロナは2012年、チャンピオンズリーグのセルチック戦でボール支配率89%という驚異的な数字を記録した。

 だが、最後に笑ったのはセルチックだった。11%が2対1で勝ったのだ。

 ちょっと極端なケースとはいえ、サッカーほど内容と結果が一致しないゲームはない。セレーゾの言うように、計画至上主義はサッカーでは万能の処方箋とは限らないのだ。

 ここで大切になってくるのは、計画通りにいかなかったとき、突発的な不測の事態が起きたときの対応力だ。即興性と言ってもいい。

 これこそがブラジル最大の強みでもあるだろう。

 日常が計画通りに進まないブラジルのような社会で暮らしていると、この対応力が自然と磨かれることになる。

 つまりナタウの空港で、機転を利かせて市内へのアクセスを確保した彼女は、ブラジルサッカーの精神を見事なまでに体現していた。

 ブラジルには、日常にサッカーの不確実性が根づいている。だから、この国からは次々と優れたプレイヤーが生まれるのかもしれない

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