ハイレベルな環境を経験して「また海外でやってみたい」という思いはある。だが今は、仙台の地でゴールを目指すこととなる。今季から仙台は木山隆之監督のもとで新しいチームを作っているところで、西村がかつて在籍していた時から選手も多く入れ替わった。その中で、以前からのチームメイトが「得点感覚に優れているし、努力家」(蜂須賀孝治)「自分にとってもいい刺激。ハングリーな性格が変わっていない」(ジャーメイン良)と振り返れば、新しく仲間となった選手からは「ゴールに対して貪欲。(パスの)出し手としては出しやすい」(松下佳貴)と、歓迎されている。
もともと、吸収力の高い選手だ。未知のポジションを自分のものにしてきたこともそうだし、仲間たちからさまざまないいところを取り入れることができる。彼の特技であるチームメイトの物真似と関係しているかどうかは分からないが、ベテランから若手まで幅広くチームメイトからの刺激を糧にしてきたことは確かだ。2018年にロシアへ旅立つときには「僕にはコーチがたくさんいました」と、実際のコーチングスタッフだけでなく、チームメートや影響を受けたすべての人に感謝していた。
「初めて会う選手も多く、とても懐かしいというより、新鮮な気持ちで臨みました」という仙台合流初日(4月3日)から、2か月が経つ。久しぶりに報道陣に練習が公開された6月1日には、実に楽しそうにボールを蹴る彼の姿が見られた。今はまだ長い中断期間の中で、再開に備えているところ。だがその間にも、西村は多くのことを新チームで吸収し、それをゴールに生かすはずだ。4-4-2のFWか、それとも2列目か、あるいは4-3-3のウイングか、インサイドハーフか――どのポジションを担うにしても、チーム戦術の中で彼がゴールに関わることへの期待は尽きない。
彼が異国の地でどんな“たくさんのコーチたち”に出会い、何を吸収してきたのか。その結果は、これからのゴールに現れるだろう。そして、今の仙台での“たくさんのコーチたち”から吸収したものも。進化を続けて壁を越えるFW西村拓真は、仙台の地で新たなゴールを目指して走り続ける。