バイエルンで背番号10をもらったのに...
前述の歴代高額移籍ランキングで、ベイルは9位に座る。ベイルのスペインでの挑戦は成功したとは言い難いが、上には上がいるものだ。このランクで3位に位置付けられているフィリペ・コウチーニョも、イングランドからスペインへの転向でキャリアの風向きが大きく変わった。
これまでもバルセロナには、多くの才能あるブラジル人が招かれた。だがコウチーニョは、すんなりと世界的名門の扉を開けたわけではなかった。
若くして期待を集め、18歳になると満を持して海を渡った。欧州で最初のクラブとなったインテルでも才能の片りんを見せたものの、満開とはいかなかった。運命が変わったのは、2012-13シーズンの冬の市場でリバプールに招かれてからだ。
チームのプレースタイルにフィットしたコウチーニョは、タイトル獲得こそなかったものの、クラブの年間最優秀選手に選ばれるなど活躍を披露した。だが一番の貢献は、クラブにもたらしたカネだろう。2017-18シーズンの冬の市場で、インテルから加入した際の1300万ユーロの10倍以上となる1億4500万ユーロの移籍金を置き土産として、バルセロナへと羽ばたいていった。
コウチーニョの運命の荒波は、まだ収まっていなかった。あれから2年半が過ぎ、今はドイツにいる。
バルサ歴代最高額の移籍金は、コウチーニョに諸刃の剣となって襲いかかった。たった1年半で見切りをつけられ、バイエルン・ミュンヘンへとローンに出された。背番号10を与えられたバイエルンでも期待にそうことはできず、完全移籍の買い取りオプションの権利が行使されるかは、かなり微妙であるようだ。
現在コウチーニョの新天地として挙がるのは、チェルシーなどイングランドのクラブばかり。かつての実績があるとはいえ、復活するかのギャンブルに資金を投じられるクラブは、プレミアリーグにしかいないのかもしれない。
バルサとスペインの覇権を争うR・マドリーからバイエルンへローンに出されたハメス・ロドリゲスはドイツから戻った今季、輝きを取り戻せなかった。今では、同じ街のライバルであるアトレティコ・マドリー行きが噂されている。
R・マドリーで調子を落とした英国人選手といえば、マイケル・オーウェンが思い浮かぶ(ベイルはウェールズ代表)。奇しくもベイルに浮上した移籍先であるニューカッスルでプレミアへ復帰し、マンチェスター・ユナイテッド行きを果たすなどしたが、「ワンダーキッド」と称された輝きは取り戻せなかった。
高額移籍トップ10には他にも、バルセロナFWウスマヌ・デンベレ(2017年、1億2500万ユーロ。ランキング5位)、マンチェスター・ユナイテッドMFポール・ポグバ(2016年、1億500万ユーロ。ランキング8位)といった、移籍金を考えると不完全燃焼な名前が並ぶ。この2人の周りにも、移籍の噂が漂っている。
果たして彼らは、自分の価値を証明できるのか。確かであるのは、後戻りする道はなく、前進するしかないということだけだ。