リーグの打ち切りにより問題化したのがテレビ放映権の支払いだった。3月27日の時点でカナルプリュスのマキシム・サーダ社長は、LFPに第4期分1億1000万ユーロの支払い(4月5日決済。ただし43試合はすでに放映済み)を行わない旨を通知している。同様の通知は、4月1日にbeInスポーツ(同じく4月5日決済。額は4200万ユーロ。ただ15試合は放映済み)からもなされた。

 ここから放映済みの試合分の放映権料支払いを求める交渉がLFPとカナルプリュスの間に始まるが、LFPが交渉役として送り込んだのがナセル・アルケライフィPSG会長をチーフとする4人のクラブ会長――他の3人はジャック・アンリエイロー(マルセイユ)とオリビエ・サドラン(ツールーズ)、ジャンピエール・リビエール(ニース)――だった。だが、アルケライフィは、放映権を持つもうひとつのテレビ局beINスポーツのオーナーでもある。そのケライフィが、支払いを拒んだ両テレビ局に交渉に行くのはどう見ても奇妙だった。

 最終的に、カナルプリュスは3700万ユーロ、beINスポーツは1060万ユーロ支払うことで交渉は妥結した。次の焦点は、4月30日の決算日にbeINスポーツが支払なかった3500万ユーロのリーグアン海外放映権の交渉である。

 また、2020~21年シーズン以降の放映権については、2023~24年シーズンまでの4シーズンをカナルプリュスがリーグアン、リーグドゥともに独占放映し、年間12億1700万ユーロ支払うことで合意に達した。リーグアンに限れば、今季までは7億4850万ユーロであるからほぼ60%の増収になる。他方で2億2450万ユーロが、国からLFPに国家補償ローンとして貸し出された。コロナ禍などによるクラブの負債を補填するためのもので、各クラブは4年を返済期間としてLFPから借り受けることができる。

 以上、リーグ打ち切り以降のフランスの動向を駆け足で見てきたが、議論され実行されているのはほぼすべてが具体的な方策であり、その過程もメディアによりすべて明らかにされている。国の政策レベルでもそれは同じで、そこに苦しい時期を共に乗り越えようというメッセージばかりが強調され、具体的な方向性が何も見えてこない日本の政治やスポーツ、メディアとの大きな違いがある。

 もちろんフランスが舵を切った方向が正しいかどうかの判断は、今はできない。オランダやベルギー、ルクセンブルクなどもリーグ打ち切りを決めたとはいえ、ヨーロッパ5大リーグの中で打ち切ったのはフランスだけであり、逆にドイツは無観客でのリーグ再開を実現し、スペインも6月12日再開の方向で動いている。イングランドとイタリアは流動的な状況のなか再開を模索している。

 フランスの決断は、その流れに水を差すものだった。今後の動向に注目したい。

 

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