クラブ間の対立と組織の複雑さのために、有効な対応ができないLPFに対し、ルグラエ会長が独断で多くを決めていく。リーグアンは28節で打ち切られること。ただしストラスブール対PSG戦が未消化であるため、順位は総勝点ではなく1試合平均勝ち点で決めることなどをメディアに発表し、後にリーグ理事会が承認するという通常とは逆の手順を踏んで事態は推移した。

 他方で政府の決定に最も強く反発したのがリヨンのジャンミシェル・オラス会長だった。リーグが中断した時点で7位に低迷していたリヨンは、このまま終了となれば来季のヨーロッパカップ出場が危うくなる。リーグカップを獲得すればヨーロッパリーグの出場権は得られるとはいえ、相手がPSGではそれも簡単ではない。リヨンにチャンピオンズリーグ出場権を与えようと、オラスはあらゆることを画策するのだった。

 まず提案したのが、2019~20年シーズンの結果をすべて白紙に戻し、来季については2018~19年シーズンの成績をもとにヨーロッパカップの出場権を与えるというものだった。この奇想天外な案が誰からも相手にされないと、ニース会長のジャンピエール・リビエールと共同で、今季の残り試合を9月から11月にかけて開催し、来季は2021年1月~11月までとする代案を提案した。オラスは言う。

「これならFIFAも満足するだろう。カタール・ワールドカップが開かれるのは11月21日~12月18日であるのだから」

 だがこの案もほとんど顧みられず、リーグの打ち切りが決定した。諦めきれないオラスはさらに発言を続ける。

「誰もが、シーズンはもう終わったと思い込んでいるのが残念でならない。UEFAのコミュニケを注意深く読むと、シーズンを最後まで完遂することを望んでいる。何らかの形で8月に試合をするのは可能だと私は考える。少なくとも上位(ヨーロッパカップ出場権)と下位(降格)のプレーオフは8月に行うべきだ。7月に無観客で開催してもいい」

 しかしこの案もまた、リーグ理事会で否決された。最後に残されたのは法的手段に訴えることだが、決定が覆る可能性は限りなく低い。

 オラスがここまでヨーロッパカップ出場にこだわるのは、ひとつは来季の出場権を失えば、それは1996~97年シーズン以来となる歴史的な事件であり、クラブの収入にも直結するという実情がある。もうひとつは、今回の政府主導によるリーグ打ち切り決定が、特定のクラブのロビー活動の結果であるという疑念を、オラスに限らす多くの人々が抱いているからである。

 ピエール・フェラチ・パリFC会長の息子マルク・フェラチは、エマニュエル・マクロン大統領が結婚したときの証人である(フランスでは婚姻届けを提出する際に証人の同伴と書類へのサインを要する)。またマルク・フェラチが結婚したときにはマクロンが証人を務めた。著名なエコノミストであるマルク・フェラチはマクロンの経済ブレーンのひとりであり、妻ソフィーは大統領選挙の際の参謀でもあった。

「ピエール・フェラチは大統領との親密な関係を隠そうとしない」と、あるクラブの会長はレキップ紙の取材に答えている。

 リーグ中断時のパリFC(リーグドゥ所属)の成績は勝ち点28の17位。10試合を残して、降格プレーオフとなる18位ニオール、自動降格の19位ルマンとはわずか勝ち点差2しかない。もちろんピエール・フェラチ自身は大統領の忖度を否定している。だが、打ち切りの恩恵に最も浴したのがパリFCであるのは言うまでもない。

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