五倫のサッカーはチャンピオンシップではない
杉山 伊東輝悦がゴールしました、みたいなのを記録で見ていただけだから。えっ、どっちが入れたんだ、これ!? って。シュート数が28対4で、ブラジルが28本も打ってて、日本が4本だよね。あれ、これおかしくないかって。そんな感じですよ。ネットがない時代なので。それを、他の会場にいて、誰かが記録を持ってきて見て、へーみたいな。
戸塚 たしかに、サッカーは他の競技とはまったく別のところでやりますからね。
杉山 そうなんですよ。
戸塚 もう違う町なんですよね。“アトランタ五輪”なのにマイアミでやっているんですよね。僕も4年前のリオ五輪に行ったけど、リオデジャネイロには行ってないですし。勝ち上がれば、最終的にはリオにたどり着くわけですが、チーム(U-23サッカー日本代表)が辿り着かなければそこで終わりじゃないですか。
杉山 よくそこまで行ったね(笑)。
戸塚 以前から取材をさせていただいていた手倉森(誠)さんが監督だったということもあって、あのチームは継続的に取材をしていました。その集大成が五輪だったので行きたかったし、運よく取材パスもゲットできた。チームにも期待をしていたのでモチベーションは高かったですけど、日本が負けたらすぐに帰ってきちゃいました。サッカーしか見ることのできない取材パスでしたし、帰国した選手の取材依頼もあったので。
杉山 難しいよね、ああいう大会の取材は。東京オリンピックもさ、サッカーは地方で試合をするでしょう。で、地方へ行くと、オリンピックの匂いなんてしないわけですよ。宮城スタジアム行っても、観客が埋まっていても、サッカーを2試合ぐらいしかやらないところにポッと行ってもね。東京にいればなんとなくお祭りっぽい感じあるけど、地方に行くと、本当にここで試合あるの? みたいな感じになるんだよね。僕はアテネオリンピックにも行ったけど、日本戦なんてもう、ほぼ無観客試合でしたよ。
戸塚 お客さんは入らないですよね。
杉山 入らない、入らない。それが準決勝くらいになってスタンドが半分うまるぐらいな感じ。でも、たとえば、アルゼンチン対イタリアをアテネでやったりすると、見に行くか、みたいな感じかな。見ると、面白かったなと。やっぱり、(マルセロ)ビエルサ(監督)はすごいね、みたいな話になったりするけれど、わざわざそのために行くんだったら、他の競技見ていた方がオリンピックは面白いですよ。
――五輪のサッカーは、言い方は悪いですが“その程度”ということですか?
杉山 というか、他の競技の方が面白いんです。他は、チャンピオンシップなんです。だけど、サッカーは、オリンピックは優勝してもなんだっけ? みたいな感じで。U―23だけならまだいいけど、あれにオーバーエイジが入ってくると、僕の感覚では、結局何の大会だか分からなくなる。僕にはそこがすごくあって。ただ単純に試合を見るだけだったら、時間がちょうど合って、見る試合が良い試合になる可能性もあったら、そういう意味では楽しいんだけど、競技としての前提が、全然崩れちゃっているので、オリンピックのサッカーって何? みたいな感じなんです。
あまり評論的な話ができないんだよね。U-23サッカー日本代表でも、久保(建英)を呼ぶかどうかで全然違うでしょ、みたいな。誰を呼べるかで全然結果の違いが見えてるじゃないですか。
――オリンピックでは所属クラブが優先され、希望の選手がすべて呼べるわけではないということですね。
杉山 そう。なのに、五輪サッカーは進展しているのか? なんてことを真剣に考えている俺はアホじゃないのか!? と思っちゃうタイプで。まあ、ちょっと距離を置いてますね。その分、他の競技を見るんです。僕はこう見えて、意外に他の競技が好きなんですよ。そもそも話になっちゃうと、サッカーライターとは呼ばれたくないですよね。
戸塚 昔はいろいろな競技を取材していましたよね。
杉山 そうそう。今だってしたいんだけど、残念ながら、やっぱああいうものって、他のオリンピックものって、結果が出ないとなかなか……。たとえばジャンプとかもよく行っていたんですよ。長野オリンピックのときとか、ヨーロッパのサッカーと兼ね合わせて、現地でジャンプの取材も行ったりしていたんです。ああいう取材は、お金がけっこうかかるので、サッカーと抱き合わせで行って、上手くやっていたんだけど、結果が出なくなっちゃうと、どうにもならなくなっちゃって。水泳などもそうなんですけど。僕は水泳を見るのがすごい好きなんだけど、やっぱり何人も活躍する人がいればいいんだけどね。
ちなみに、1992年のバルセロナオリンピック、女子200メートル平泳ぎの岩崎恭子ちゃんの金メダルを現場で見てるんです。
――すごいですね!
※ 杉山氏・戸塚氏の五輪対談後編は明日アップ予定です。お楽しみに。