このままでは、いずれ夏場にサッカーはできなくなるだろう。
そうなれば、夏の気候が厳しく、同時に冬には豪雪に見舞われる日本では、真夏と真冬にそれぞれリーグ戦の中断期間を置かなくてはならなくなる。つまり、「春秋制」のままにしても夏の猛暑の期間に「サマー・ブレーク」を置かなければならないし、「秋春制」に変更したとしても、やはり冬場にはヨーロッパ主要国より長い(ただし、ロシアよりは短い)「ウィンター・ブレーク」を置くしかない。
それなら、春と秋に分かれて行われる2つのミニ・シーズンを「春秋」とくくろうが、「秋春」とくくろうが、大した違いはなくなるだろう。
また、もし今回の新型コロナウイルス感染問題によって学校の「9月入学」が実現したとすれば、状況は一変する。「学校チームとのシーズンのズレ」という「秋春制」実施に当たっての最大の問題点も一挙に解決されるからだ。いや、もし学校が「9月入学」に移行したりすれば、Jリーグは「秋春制」に移行せざるをえなくなるかもしれない。
■近未来のシミュレーション
それでは、実際にJリーグで「秋春制」を試験的に導入するとして、今後のスケジュールをシミュレートしてみよう。
もし、今シーズンを「2020年シーズン」ではなく「2020/21年シーズン」に変更するとすれば、「再開」を急ぐ必要はなくなる。感染対策も選手のコンディション調整もしっかりと準備をしたうえで7月に再開すればいい。7月であれば、感染の状況や対策の進み具合によって、無観客ではなく、通常開催が可能になるかもしれない。
その後、猛暑に見舞われる7月~8月には本来なら試合をなくすべきだが、今年は開幕が遅れたこともあるので本来ならオリンピックが行われるはずだった7月にも週1試合ペースで試合を行うことにしよう。とくに、今年は冬になれば再び新型コロナウイルス感染(第X波)に襲われる可能性も高いから、なるべく秋口までに試合を消化しておいた方がいい。
先ほど、「長期のウィンター・ブレーク」と書いたが、「秋春制」に移行した場合の「ブレーク」は現在のJリーグのシーズンオフと同程度とすべきだろう。12月に「ウィンター・ブレーク」に入り(天皇杯の日程によって、「12月上旬まで」とするか、「12月下旬まで」とするかが決まる)、従来のシーズン開幕と同じく2月下旬に再開すればいい。
このスケジュールなら、豪雪地域のクラブも従来通りの対策で乗り切ることができる。
2月下旬に再開した2020/21年シーズンは6月に終了して、7月の東京オリンピックと直後の8月をオフにして、8月下旬あたりに2021/22年シーズンを開幕させる。
そして、今回はあくまでも新型コロナウイルス対策としての試行的実施だから、この後は、元の「春秋制」に戻すことにする。つまり、2021/22年シーズンは、通常のシーズンより長くして、2022年10月に終了させるのだ。
というのは、2021年には東京オリンピックというビッグイベントが開催されるし、2020年に予定されていたワールドカップ予選が延期になるので、2021年には予選を消化するために日本代表の日程がタイトになる可能性もあるからだ。
そして、2022年11月にはカタール・ワールドカップが予定されているので、「春秋制」にしても「秋春制」にしても、2022年の10月から12月にはリーグ戦は実施できなくなる。そこを利用して、2023年からは従来通りの「春秋制」に戻すことができるのだ。
もちろん、2021年に本当に東京オリンピックが開催できるのかどうか定かではないし、新型コロナウイルスのワクチン開発が遅れたりすれば2022年のワールドカップもどうなるか分からない。ワールドカップ予選の予選方式が変更になる可能性もあるので、今後のスケジュールについてはさまざまなシナリオを準備しておかなければならないのは言うまでもない。
もし、「秋春制」を2シーズンにわたって実施すれば、「秋春制」のメリットを経験することができるだろうし、その問題点も洗い出すことができるはず。
いったん「春秋制」に戻した後、落ち着いた状態で両者を勘案して、Jリーグの将来のシーズン制を議論すればいいのではないか。いや、もし試行期間中に「秋春制」のメリットが問題点より大きいことが明らかになれば、そのまま2023年以降も「秋春制」を維持することもできる。