■大きなメリットが複数ある

 Jリーグの「秋春制」の論議は、「9月入学」問題とかなり多くの面で共通性がある。

「秋春制」も、「9月入学」問題と同じように、これまでも何度も議論されてきた。そして、「秋春制」最大のメリットも、まさに「9月入学」と同じく海外つまり世界のサッカーの中心となっているヨーロッパにおけるシーズン制と合わせられるという点だ。

 それによって、日本人選手の海外移籍や外国籍選手のJリーグへの移籍が、よりスムースに行えるし、日本代表強化のためにも日本のシーズン制をヨーロッパと同じにする方が好都合となる。

 しかし、「9月入学」と同じように、「秋春制」に関しても解決すべき課題が多く、反対論も根強い。

 最大の問題点は2つある。まず第一は「冬場の気象条件」である。日本の冬はヨーロッパ北部ほど寒くはないが、豪雪地帯が多く、冬場の試合開催がきわめて難しい。スタジアムだけならば観客席に屋根を付けるとか、芝生のヒーティング・システムを導入するなど解決法は見いだせるかもしれないが、練習場にまでそうした設備を完備するには巨額な費用がかかるし、豪雪の中ではサポーターの移動も難しい。

 もう一つの問題は、Jリーグが「秋春制」を実施しても、実業団チームは会社の年度と同じく4月~3月を基準に活動せざるを得ないだろうし、高校、大学のチームも同様だろうから、下部リーグとのシーズンのズレが生じてしまう点だ。

 ご承知の方もいるかもしれないが、僕自身はこれまで「秋春制」には反対していた。

 ヨーロッパでやっていることを金科玉条のように考える必要はない。各国の伝統や気候によってシーズンが異なるのは当然であり、冬場の豪雪地帯のことを考えれば、やはり日本では「秋春制」を強行すべきではないと思っていた。そして、今でも基本的にその立場に変わりはない。だから、新型コロナウイルス問題を利用して、「秋春制」に移行させてしまおうなどとは思っていない。

 ただ、Jリーグ再開の見通しが立たないという現状を考えると、開幕(再開)を遅らせて「秋春制」とするのが最も合理的な解決なのではないかと思うのだ。少なくとも“思考実験”くらいしてみる価値はあるのではないか。

 2020/21年シーズンとその次のシーズン(2021/22)を「秋春制」で実施し、その後は元の「春秋制」に戻してもいい。「秋春制」を実際に実施することによって、メリット、デメリットがより明確になるだろうから、いったん「春秋制」に戻した後、将来のシーズン制を再検討してもいい。つまり、「秋春制」の実験と考えてもいいのではないか。

 僕が最近になって「『秋春制』を許容してもいいのでは?」と思うに至ったもう一つの理由は、地球規模の気候変動によって最近の日本の夏が高温多湿化している現実だ。今後も、かなり長期間にわたって地球の温暖化が進行するはずだから、もはや夏場にサッカーのような運動量を要求される屋外スポーツを行うことは選手の健康のための弊害が大きいし、観客も熱中症の危険と隣り合わせなのだ。

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