■判定の精度より「密」の回避を

 それに対し、2019年に年間を通じて定期的に研修会を開き、70人を超す有資格者を育ててからトップリーグでの全面導入に踏み切った日本のVARは、相当期待できるものと思われた。そして実際、2月21日から23日にかけて開催されたJ1の第1節では、VARが非常にスムーズに運営されて効果的に使われ、評価も高かった。

 だが日本はインフラの関係でブンデスリーガのような「セントラル方式」は取られておらず、「バンシステム」が採用されている。このシステムで「二密」、なかでも「密接」を解決することは難しい。

 現在、Jリーグは無観客でのリーグ再開を検討している。無観客開催にはいくつもの課題があるが、審判員の移動もそのひとつだ。試合会場と同地域に住み、自家用車あるいはリーグが用意した車で会場にはいれる審判員はいい。しかしJリーグ担当審判員の居住地には大きなばらつきがあり、新幹線や航空機での移動を伴わなければ試合に必要な居住地域外の審判員を手配することができないケースは当然ある。

 試合指名に制限がつき、人の手配が難しくなった状況で、VARにまで手が回るだろうかという、大きな疑問もある。

 しかもVARには、VORでの「二密」という固有の問題もある。

 周到な準備の末、自信をもってスタートした今季のVAR。しかしこの状況下でその使用にこだわる必要があるのだろうか。

 新型コロナウイルスの脅威が去らないなか、無観客でも、あえて「再開」に踏み切ることの意味は小さくない。しかし選手が、審判が、そして運営スタッフや最大限の注意を払い、対策をたてたうえで「リスク」にチャレンジし、社会に喜びや希望を与えようという試みのなかで、重要な判定の精度を「95%から99.3%」に上げることの意味がどれほど大きいのか―。誰もが一歩引き、冷静に考える必要がある。

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