■ユアテックスタジアムの雰囲気は世界屈指

 ここでちょっと蛇足。私もサッカーを訪ね、随分と世界津々浦々を旅してきた。そんな私だが、我が愛するベガルタ仙台の応援は最高峰だと確信している。コールリーダーを軸に、試合の流れと変化を考えながら、ありとあらゆる歌とコールとチャントを駆使するユアテックスタジアムの雰囲気は世界屈指のものだ。一方で、この日のエコパのようなシンプルな大声援も悪くない。そして、このようなシンプルな応援ならば、リードはお手のものだ。もう30年以上前になろうか、サッカー日本代表の応援のために、閑散とした国立競技場で、必死に周囲を巻き込んで応援の輪を広げていった時代を思い起こして懐かしかった。

 「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」は、日本サッカー狂会創始者の故池原謙一郎先生(筑波大学名誉教授)が、発明されたのは、よく知られたことだと思う。池原先生からは、直接幾多の薫陶を受けることができた。中でも、忘れられないのは、87年ソウル五輪予選後の議論。当時、中国戦のアウェイゲームを応援に行ったのは、我々好事家数十人程度だった。一方、クウェートで行われた男子バレーの予選は100名を超えるファンが現地で応援したと言う。その年の忘年会で、私が「応援に行く人数が違った、我々はバレーに負けている」と言う趣旨のことを語った。すると、いつもは我々の議論をニコニコとおだやかに聞いている先生にたしなめられた。「そもそも、勝ち負けは韓国や西ドイツのような他の国の代表チームと争うものですよね。また、競技の人気度の比較をするにしても、海外の試合を応戦に行った人数で語るのはいかがなものですか。本質的には、競技人口なり、合理的な組織が作られているかで、語られるべきではありませんか」と。

 池原先生が「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」を始めたのは1968年の親善試合日本対アーセナル戦だったと言う。あれから、半世紀が経ったアイルランド戦。天国の池原先生に、ちょっと嬉しい報告ができると思っている。先生が発明された「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」は、フットボールの兄弟であるラグビーに広がり、世界最強国を戦闘能力で粉砕することに成功しました、と。

(※後編に続く)

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