■静岡の歓喜と、ニッポン!チャ!チャ!チャ!
9月28日、ジャパンはアイルランドとの死闘を制して、19対12で見事に勝ち切った。試合内容もすばらしいものだった。
20分までに2トライを奪われ、3対12、難しい試合になってしまう雰囲気があった。しかし、30分過ぎ、自陣での相手ボールスクラムでペナルティを奪い、流れは完全に変わった。この瞬間のプロップの具智元のガッツポーズが、何とも印象的だった。ただ、現場にいた私には、最初何が起こったかよくわからなかった。横にいた息子はスクラムの様子を見て具のガッツポーズより前に「いよっしゃああ!」と叫び、私はコンマ何秒遅れで主審が日本陣側の手を高く上げたのを確認し「いよっしゃああ!」と叫んだ。このあたりのラグビーの押した押された、どっちが勝ったかの判断は、ラグビー素人の現地観戦者にはとても難しい。ともあれ以降、敵陣でのプレイが増え、田村優がペナルティキックを2本決めて3点差まで追い上げて前半終了。
後半も攻勢をとる。幾度も手変え品変え攻め込むが、アイルランドの守備も固く、どうしても最後の5mが破れない。そうして迎えた58分、敵陣深いところで得たマイボールスクラムから、幾度か左右に揺さぶり、最後は、中村亮土、ラファエレティモシーの両センタの妙技から、福岡堅樹が抜け出してトライ。これは、どんなチームでも防げないだろうと思える、素早く美しい変化に富む攻撃だった。
その後、幾度から自陣に攻め込まれるが、強烈なタックルで22mライン近傍で幾度も止める。アイルランドもさすがで、ジャパンの激しいタックルを食らっても、とにかくボールを落とさない。そのような攻防が続いたが、後半ジャパン守備陣は崩れず、とうとう押し切った。
それにしても、会場のエコパの雰囲気はすばらしかった。特に終盤、アイルランドが力を振り絞って攻め込み、ジャパンが必死に我慢を重ねた時間帯。地鳴りのような「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」は、間違いなくジャパンの選手たちを奮い立たせたはずだ。そして、選手たちの奮戦がフィードバックとなり、私たちをさらに奮い立たせる。姫野和樹がジャッカルを成功させた前後の雰囲気は最高だった。40余年の観戦歴で、この日のエコパアイルランド戦は、22年前のフランスワールドカップ出場を決めたジョホールバルのイラン戦、17年前の地元ワールドカップでの横浜国際競技場のロシア戦と並ぶ、生涯3大「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」試合だったな、うん。
ほんの少しだけど、自分も勝利に貢献できたかなと思っている。前半から、節目節目で「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」を始め、時には立ち上がってスタンド後方まで煽り、回りを巻き込んで行ったのだ。次第に「ニッポン!チャ!チャ!チャ!」は前後左右広範なブロックに広がり、試合終盤には大きな声援のうねりとなった。