だが世界中を襲ったコロナウイルスは、「金満サッカー地域」も見逃してはくれなかった。その結果が、「24時間ノー・サッカー」である。欧州のサッカーは「なんとか日程をこなしてシーズンを終了させたい」、すなわち「放映権契約を完遂したい」とあがいているが、現状ではまったく見通しが立たない。大会が(無観客ではあっても)完全に実施されなければ、当然、放映権料の減額につながる。欧州のクラブにとっては大打撃になりかねない。

 「ビッグクラブ」であろうとなかろうと、状況はどんなプロサッカークラブにとっても変わることはない。試合ができなければ入場料収入がなくなり、放映権収入も減る。スポンサーも、自らの業績不振を省みずにプロサッカーにカネを注ぐことなどできない。真っ先に切られるのが、スポーツへのスポンサーシップだろう。

 現在、多くの人が「感染流行は数カ月で終わる」という希望をもっている。しかしもしかすると、それは1年単位のものとなるかもしれない。1年間ホームゲームができなければ、プロサッカークラブの多くが経営の危機に瀕する。いや、数カ月でも倒産の危機に至るクラブは世界中に数多くあるはずだ。

 この状況下、敢えて私は、世界のサッカーの構図を変え、コロナウイルス禍が去った後によりバランスの取れた健全な状態にする「試案」を提案したいと思う。

■モンスターの我が世の春

 現在は、世界のサッカーで欧州にだけカネが流れる仕組みになっている。必死の努力にもかかわらず世界各国のプロサッカーが経営難に苦しんでいる時代に、欧州ではたった1人のスター選手獲得にトップクラブが100億円を費やすことが日常となっている。欧州以外に、年間の総収入が100億円を超すクラブがいくつあるだろうか。

 そして欧州のサッカーに流れ込むカネの正体とは、「テレビ放映権」にほかならない。何よりも、その少なくないパーセンテージが、プロサッカー経営に苦しむ地域から流れ込んでいるという事実は、見逃すことができない。中国や日本を中心としたアジア、アメリカやカナダの北米、そして南米でも、UEFAチャンピオンズリーグ、イングランド・プレミアリーグ、リーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、イタリア・セリエAなどが日常的に放映されている。

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