■ホイッスルの音さえ聞こえない
「24時間ノンストップ」
「かつて」サッカーはそう言われた。
地球がぐるっと1回転する間に、世界のあちこちで次々と試合がキックオフされ、ひとつが終わる前には次の試合が始まっている。こうして、サッカーは止まることなく続けられている。サッカーは文字どおり「地球人類のゲーム」である―。
だが、いまは「24時間ノー・サッカー」の状況にある。「人と人の接触」を避けるため、世界中でサッカーがストップしている。サポーターの歌声も、得点が生む歓声も、そしてレフェリーのホイッスルの音さえ聞こえない。
コロナウイルスの蔓延が始まった当初、欧州主要国のリーグやUEFAチャンピオンズリーグなどでは「無観客試合」が行われていた。予定どおり5月までにシーズンを終了させるという目的もあっただろう。しかしそれ以上に、こうした大会に注ぎ込まれている「テレビ放映権契約」を履行するためだった。
最新の「Deloitte Football Money League」レポート(2020年1月)によれば、欧州のビッグクラブでは入場料など試合開催によってはいる収入は全収入の2割にも満たず、放映権収入の割合が年ごとに大きくなっているという。ランキング1~5位の「トップ・オブ・トップ」(FCバルセロナ、レアル・マドリード、マンチェスター・ユナイテッド、バイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマン)では全収入に対する放映権収入の割合は33%だが、16~20位のクラブ(ASローマ、マルセイユ、ウェストハム、エバートン、ナポリ)では65%(!)にもなる。
考えてみれば当然のことである。スポンサー契約は一部のトップクラブに集中する傾向にあるが、放映権収入はリーグや大会などで分配されるため、成績の良いトップクラブとその他のクラブで差はあるものの、下位のクラブも相当な配分を受けることができるからだ。ちなみに、トップ5クラブの年間収入平均は約7億2100万ユーロ(約865億円)、うち放映権収入は約285億。16~20位のクラブの平均収入は約2億1800万ユーロ(約261億円)、うち放映権料は約170億円だった。