入場者を入れた通常開催の方が、当然ハードルは高い。
つまり、再開の時期が遅くなってもいいから通常開催を目指すのか、それとも無観客にしてもいいから早期開催を目指すのかという選択だったのだ。2つの選択肢にはどちらにもそれぞれの利点があるので、なかなか難しい選択だったはずだ。
無観客で早期に再開しておいて、状況が好転した時点で通常開催に切り換えるという方法もある。そうすれば、早期に試合を開催して試合数を消化することができるから、確実に大会を成立させることができる。一方、あくまでも観客を入れての通常開催を目指すなら、今後の感染拡大の状況によっては試合の開催がさらに大幅に遅れて、結局、日程がとれなくなって消化試合数不足によって大会が不成立に終わってしまうリスクもある。
だが、それでもJリーグとプロ野球は通常開催にこだわった。そして、プロ野球はクライマックスシリーズの中止を余儀なくされ、各チーム143試合というリーグ戦の試合数を減らさざるをえない可能性も出てきている。
一方、大相撲は3月場所(春場所)が無観客で開催され、15日間の全日程を無事に消化した。
テレビで観戦していても無観客という環境の中での取り組みには当初かなりの違和感も覚えたが、逆に力士たちの息遣いなどがよく聞こえてある意味で新鮮でもあった。そして、無観客という形であっても通常通りに場所が開催され、それがテレビ中継されたことで社会の停滞感を幾分かでも和らげるという効果もあった。
だから、無観客開催という結論もけっして間違いではなかった。
大相撲と同様にJリーグも無観客で試合を開催して、地上波でも多くの試合を放映することによって社会に元気を与えることもできただろう。
■これからの推移は
だが、Jリーグとプロ野球は通常通りの開催にこだわった。その根幹にある考え方は、プロ・スポーツというものの存在意義をどう考えるかということだったのではないだろうか。社会の中でプロ・スポーツが存在する意義を考えれば、ファン、サポーターを抜きには考えられないものだという覚悟のようなものがそこには感じられる。
もちろん、このまま試合の観客を入れての開催が難しいという状況が続き、リーグ戦の再開がさらに遅くなってしまうと、いずれは再び無観客試合の開催を検討すべき時もあるのかもしれない。だが、せっかくここまで通常開催にこだわったのだから、最後の最後までその姿勢は大事にしてほしいものだ。