『岡田メソッド』
岡田武史著『岡田メソッド 自立する選手、自律する組織をつくる16歳までのサッカー指導体系』(英治出版)
昨年12月に出版された『岡田メソッド』(英治出版)。代表監督として2度日本をワールドカップの舞台で指揮し、現在はFC今治のオーナーとなった岡田武史が著した書籍だ。日本屈指の知将が考えるサッカーの真髄と、込められた思い。同書のプロデューサー・山下智也氏に聞いた。

『岡田メソッド』にある「はじめに」「第1章 岡田メソッドとは」「第2章 プレーモデルの意義と全体像」「第8章 コーチング」「第9章 チームマネジメント」「おわりに」は、特に岡田自身の考えが色濃く表れている。 

「岡田さんは、“編集を通してよりよくしたい”、“どんなに小さいことでも指摘してほしい”と何度も言われていました。その言葉を受けて、編集チームの岩佐文夫さん、和田文夫さん、私が文章や図に校正を入れると、それを丁寧に見て再び手を入れてくださる。僕が言うのもおこがましいのですが、岡田さんは謙虚という言葉がぴったりで、“誰からも何からも学ぼう”という姿勢がすごいんです。“なんでもいいよ”って言ったらたぶん本は早くできていました。でも、やっぱりこだわって、ブラッシュアップされていった。こんなに忙しい岡田さんが、ここまでやるのかとほんとに驚きました。

 岡田さんの魅力は、一貫性だと思います。99年に書かれた『岡田武史の考えるサッカー』という本に、すでに一部プレーモデル的なことが書いてあるんですね。個人、チーム、攻撃、守備において、それぞれどんな原則でいかに動くか。そしてあとがきには、地域に根ざしたクラブの重要性や、物の豊かさより心の豊かさを大切にする社会づくりについても。それを20年かけて取り組んでいることに頭が下がります。本当に一貫しています」(山下氏)

1999年に書かれた本の内容が2020年に実現

専門書でありながらも、数多くの人に『岡田メソッド』は受け入れられている。

「自立する選手、自律する組織を作りたいという人に向けて、岡田さんご自身の経験があますところなく書かれた本なので、類書は1000円代がほとんどですが、定価は3200円にしました。複数人の編集者、装丁家や作図のデザイナーなど製作陣は豪華ですし、長く使われてほしいと思っていい紙を使っています。用語集は、使いやすさを重視して別紙の付録としました。また、本が開きやすいように製本もこだわっているんです。

 読者層としては、サッカーのコーチや岡田さんのファンはもちろん、マネジメントや人材育成に携わっているビジネスパーソンにも読んでいただいているようです。

 それから書店員さんにとっても、岡田さんは特別な人なんです。地元の今治や松山の書店さんが大展開してくれたのはもちろん、他の書店さんでも、岡田さんが今治に行かれて、志のあることをされているとご存じなんですよね。岡田さんが思いを込めて作った本だから、応援したいという方が何人もいらっしゃって感動しました。

 売れ行きとしては、最初に刷った5000部が発売日にはぜんぶなくなってしまって、すぐに5000部刷って、それもなくなって再度重版しました」

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