■ 訪れた運命の時。157億円のブラジル代表を止めた「33歳の守護神」
841人のアーセナル・サポーターで埋まったスタンドの前で、「4部」フリートウッド・タウンの選手たちは何と落ち着いていただろうか。「チームでPK戦の練習なんてしたことがなかった」と、DFコナー・ホーウェイが試合後に明かしたが、とても信じ難いほど、全員が完璧なキックを見せたのである。
「先攻」を選択したフリートウッド・タウンの選手たちは、1番手のFWコフラン、2番手MFニール、3番手FWウィル・デイビス(前半に得点を挙げたルパロビと後半29分に交代して出場)、4番手MFキャノンと「完璧」と言っていいキックを決めた。アーセナルGKメリエは4本中3本で読みの逆を突かれ、右に跳んで読みが当たったニールに対しても、強いライナーが右上隅を突いたため止める可能性はなかった。
そして「運命の時」が来る。
アーセナルの4番手は後半37分にスビサメンディとの交代で投入されたブルーノ・ギマランイス。今夏7500万ポンド(約157億円=フリートウッド・タウンの年間収益の10倍である)でニューカッスル・ユナイテッドから移籍したブラジル代表MFだ。今夏のワールドカップの日本戦でもほぼフル出場した。
ペナルティーエリアのライン上にあったボールを右足ですくって手に持ったブルーノ・ギマランイスは、慎重にペナルティーマークに置くと、左斜め後ろに8歩下がり、さらに左に1歩。そこからアプローチすると、最後のところで細かくステップを踏んで右足で右隅に正確なキックを見せた。だがこれをフリートウッドGKリンチが右に跳んで見事に止めたのだ。
フリートウッドの5番手はホーウェイだった。北アイルランドのナショナル・アカデミー出身、19歳とは思えない落ち着きでアーセナルの攻撃に対応し続けたホーウェイは、またもアーセナルGKメリエの読みの逆を突き、左上に力いっぱいのシュートを叩き込んだ。PK戦はアーセナルの5番手を残してフリートウッド・タウン5、アーセナル3。勝負はついた。



























