サッカーというスポーツは、無数のディテール(詳細)と予測不能なドラマであふれている。サッカージャーナリスト・大住良之が重箱の隅をつつくような視点で語る「超マニアックコラム」。収益規模100倍の王者アーセナルを本拠地に迎えたフリートウッド・タウン。スタジアムの熱気が最高潮に達する中、試合は“謎のドローン乱入”という前代未聞のハプニングから幕を開ける。【第3回/全4回】
■ 総額数百億円のタレント軍団vs「疲労困憊の4部クラブ」。対照的な選手起用
アーセナルのミケル・アルテタ監督は、当然のことながら、3日前のエバートン戦から大幅にメンバーを入れ替えた。先発を9人変えたのだ。エバートン戦に続いての先発は、DFマイルス・ルイススケリー(イングランド代表、フリートウッド戦ではボランチとして出場)とFWビクトル・ヨケレシュ(スウェーデン代表)の2人だけだった。
最終ラインに17歳のマーリ・サーモン、左ウイングに18歳のセーダク・オニール(この日がトップチームデビュー)、そして右のウイングには16歳のマックス・ダウマンと、10代の若手3人も起用されていた。このなかでダウマンは15歳でプレミアリーグにデビュー、今年3月には16歳と73日というプレミアリーグの最年少得点記録をつくった選手で、次代のエースと目される左利きの天才選手である。
しかし「先発9人交代」でも、アーセナルには、DFクインテン・ティンバー(オランダ代表)、DFクリスティアン・モスケラ(スペイン代表)、ピエロ・インカピエ(エクアドル代表)、MFマルティン・スビメンディ(スペイン代表)、MFカイ・ハバーツ(ドイツ代表)、さらにはMFルイススケリー、FWヨケレシュと、代表選手がずらりと並んでいた。これこそ、「1500億円クラブ」の資金力の証明だった。
一方のフリートウッド・タウンは、1-2で敗れた3日前のアウェイ、エクセター・シティ戦とほぼ同じメンバー。アーセナルとは対照的に、2人を入れ替えただけだった。土曜日には試合直後にエクセターからバスで5時間半をかけて戻ったのだが、フリートウッド・タウンはこの週には水曜日にもチェルトナム・タウンでアウェイゲームを戦っており、10月17日のホームゲーム(対ロザラム、2-0の勝利)から続く「4連戦」は、「弱小クラブ」も例外とはしてもらえなかったのである。
当然、疲れはある。しかし「史上最大の試合」を前に、フリートウッド・タウンの選手たちは意気盛んだった。満員の「ハイバリー・スタジアム」など経験した選手はいなかった。しかもテレビ中継も行われ(この試合は日本でもDAZNでライブ観戦することができた)、誰もが「勝てるわけがない」と思っていただけに、選手たちは、こんな舞台に立てることだけで喜びにあふれていた。選手入場を前にスタジアムでは花火が打ち上げられ、スタンドも否応なく盛り上がった。



































