サッカーというスポーツは、無数のディテール(詳細)と予測不能なドラマであふれている。サッカージャーナリスト・大住良之が重箱の隅をつつくような視点で語る「超マニアックコラム」。今回は、現代サッカーにおける最大のロマン、すなわち「年間収益100分の1のクラブ」がプレミアリーグ王者を沈めた、痛快すぎるジャイアントキリングの真実に迫る。【第1回/全4回】
■ サッカーが秘める「最大のロマン」
この連載で、9月に「人口1万3000人の村の奇跡」の話を書いた。今季ドイツのブンデスリーガ1部に初昇格を果たした「村のクラブ」SVエルバースベルクの開幕直後の快進撃の話である。
強豪バイエル・レバークーゼンとボルシア・メンヘングラッドバッハに開幕から連勝した後、この「村のクラブ」はホームに王者バイエルン・ミュンヘンを迎え、今季初敗戦を喫したものの、1-2の接戦を演じてファンを喜ばせた。そして先週末には佐野海舟を擁するマインツにホームで4-1の勝利を収め、第8節を消化した現在、4勝1分3敗、得点16失点16、勝点13、18クラブ中、堂々7位につけて奮闘を続けている。
私はこうした話が大好きだ。それはサッカーという競技が持つ最大のロマンのひとつだからだ。
今、世界を席巻しているのは、年間収益が1000億円規模という欧州のビッグクラブであり、毎年莫大なテレビ放映権収入を稼ぎ出している「ビッグリーグ」だが、そうした世界とはほど遠いところに、何千、何万というプロサッカークラブが存在し、それぞれの地域で人々の生活に潤いや張りをもたらしつつ、苦闘し、奮闘している。そして、年間収益がビッグクラブの100分の1というクラブが、90分間でその差を克服してビッグクラブを倒すこともあるのが、サッカーという競技なのだ。

































