日本から一歩外へ出る時、私たちは必ず「海」か「空」を越える。しかし、陸続きの世界では、たった一本の「川」を渡るだけで、文化も言語も異なるまったく別の国へと放り込まれるのだ。蹴球放浪家・後藤健生が、サッカーボールを追って世界中を巡る中で体験した「国境河川」のリアル。かつて日本人にとって最大の難関だったアジアの川から、熱狂に包まれた2026年北中米ワールドカップでの米墨国境越えまで。スタジアムへ向かう道中で味わった、知られざる越境ドラマをお届けする!
■香港から深センへ、「一国二制度」の境界を歩く
前回の『蹴球放浪記』では島根県松江市の大橋川の話をしました。1本の川の南北で街の性格がまったく違うという話でした。
しかし、世界には「川」が国境になっているところもたくさんあります。つまり、「川の向こう」はまさに異国なわけです(そういえば、先日、中国と北朝鮮の間を流れる鴨緑江に新しい橋が開通したというニュースがありました)。
僕は、昨年も今年も国境の川を渡る経験をしました。
昨年の2月にはAFC U20アジアカップを観戦するため、香港から深セン川を渡って広東省の深センに入りました。
香港は中華人民共和国の一部(特別行政区)なので厳密には「国境」ではありません。しかも、最近は中国が香港の政治に深く介入して返還時に約束した「一国二制度」も骨抜きにされてしまいましたが、かつて英国植民地だった香港(1997年に中国に返還)は様々な意味で中国本土とは違っています(サッカー界では香港協会=中国香港足球総会=はFIFAのメンバーであり、香港代表チームも活動しています)。
その事実上の「国境」を渡ったのです。

















