決勝トーナメント進出がかかったグループステージ第3戦。日本代表はスウェーデンと1-1で引き分け、2位通過を決めた裏で、ピッチ上では目を疑うような「異常事態」が起きていた。MF中村敬斗に対する、主審からのソックスの長さへの執拗な注意である。
履き直しのためにピッチ外へ出される事態となり、中村本人が試合後に「2~3分は抜けていたので、本当にチームに迷惑を掛けて申し訳ない気持ちがある」と責任を口にするほどの影響を及ぼした。さらに、中村のガンバ大阪時代の恩師でもある日本サッカー協会の宮本恒靖会長も、「これまでの2試合(オランダ戦・チュニジア戦)でも、今日の試合前のチェックでも何も言われなかったのに、なぜ試合中に急に言われるのか。我々にとって不利になる」と、一貫性を欠く主審のジャッジへ苦言を呈した。
今大会絶好調の中村は、この日も前半終了間際に極上のノーステップシュートを放ったものの、再三の注意のせいか、試合を通して、どこかプレーに集中しきれない様子がうかがえた。第1戦、第2戦、さらにはこの日の試合前の用具チェックでもまったく問題がなかったスタイルが、なぜ試合中に突如として咎められたのか。何か“特別な意図”があるのではないかと勘繰りたくなる一連の騒動について、プレミアリーグを取材するロンドン駐在のサッカージャーナリスト・田嶋コウスケ氏が、中村敬斗および各国代表の名選手たちの証言を基に、選手のプレーの質にも多大な影響を与えかねない、この大問題について深く斬り込む!
■「好きでやっているということではない」
W杯のピッチを見渡すと、ソックスをふくらはぎの下まで落としてプレーする選手たちの姿が目に入る。極めて小さなシンガードを着けるスタイルも、今や珍しいものではない。
W杯デビュー戦となった6月14日のオランダ代表戦で衝撃的な初ゴールを決め、続くチュニジア戦でも見事な先制アシストを記録、さらにはこのスウェーデン戦でも前半終了間際に高度なノーステップシュートを放つなど、今大会で目覚ましい活躍を見せている日本代表MF中村敬斗もその一人である。
通常ヒザ下まであるソックスをふくらはぎの下、足首付近まで極端に落とし、極小のシンガード(すね当て)をかろうじて覆い隠すという独特のスタイルは、今では中村のトレードマークのようにも見える。SNSなどで注目され、「なぜあそこまでソックスを下げているのか」と話題になることもある。
だが、その理由は見た目の格好良さでも、自己表現でもない。本人にとっては、プロとしてプレーを続けるための切実な選択だった。
「好きでやっているということではなく、足がつってしまうからです。最近のソックスは軽量化されていて、タイトに作られている。足が圧迫されると、僕の場合は、試合の後半にけいれんしてしまう。防止のために下げています」
中村は、そう明かす。
近年のサッカーソックスは、以前よりもフィット感を重視する傾向が強くなっている。現代サッカーではスプリント、急停止、急加速、鋭い切り返しが繰り返される。ソックスがズレれば、不快感につながる。そのため、選手の足と一体化するような履き心地が求められるようになった。
もちろん、それは用具の進化でもある。ただ、すべての選手の身体に同じ感覚で合うわけではない。特にふくらはぎの筋肉が大きく発達した選手にとっては、締め付けが強く感じられることもある。中村の場合、その圧迫が試合後半のけいれんにつながることが少なくなかったという。
ソックスを低く履く選手は、世界的に見ても珍しくない。W杯出場組では、ドイツ代表のフロリアン・ヴィルツ(リバプール)やスペイン代表のマルコス・ジョレンテ(アトレチコ・マドリード)、さらに先日行われた日本戦で70分から途中出場したオランダ代表のメンフィス・デパイ(コリンチャンス)も、ソックスを下げてプレーしている。セネガル代表のイスマイラ・サール(クリスタル・パレス)も、そのひとりだ。
プレミアリーグでも、そのスタイルは広く見られる。なかでも有名なのが、マンチェスター・シティのジャック・グリーリッシュである。
















