驚異のパスワークで対戦相手を圧倒し、順調に連勝を飾ったアルゼンチン代表。だが一見、完璧に思えるそのスタイルには、リズムが単調になれば相手守備陣に慣れられてしまうという、表裏一体の「致命的な欠陥」も潜んでいる。風間八宏監督率いる南葛SCの国内リーグでの具体的な実例を交えながら、サッカージャーナリスト後藤健生が、絶対王者がW杯連覇という偉業を成し遂げるために乗り越えるべき戦術的な課題を鋭く突く!
■メキシコに存在した「石の輪」ゲーム
1519年にエルナン・コルテス率いるスペイン兵士たちがやって来る前のメキシコには、現在では「ペロタ」と呼ばれているボールゲームがあった(「ペロタ」はスペイン語で「ボール」の意)。
中空ではないゴムの塊のボールは堅くて重いためプロテクターを付けた肘や膝、足などで打ち合った。
基本的にはバレーボールのような形で得点を争ったようだが、コートの壁の上方に石製のリングが取り付けてあり、このリングにボールを通したら、その瞬間に勝利が決まった(勝利チームのキャプテンが名誉を称えられて生贄として心臓をえぐり出されたこともあったという=負けチームのキャプテンではない)。
しかし、ボールより少し大きいだけの上空にあるリングにボールを通すのは至難の業だった。
現在のサッカーでも、ゴールにボールを入れることは古代メキシコのペロタで石の輪にボールを通すのと同じくらい難しい。
サッカーのゴールは幅が7.32メートル、高さが2.44メートルもあるが、上空にある石の輪と違って、ゴール前には身長が190cmもある大男が5人も6人も群がっており、しかも、そのうちの1人は手を使ってもいいというルールなのだ。
こうした壁の隙間を通してボールをゴールの中に入れるのは、たとえば右足でファーサイドに巻いたシュートを打つふりをしながら、1タッチ、2タッチとボールを動かして、相手DFが股を開ける瞬間にニアサイドにシュートを打ち込むといった技術を発揮しなければならないのだ。
ボールをゴールに入れることには特別な技術がいる。それは、パスをつなぐ技術とはまた別のものなのだ。
だから、サッカーではどんなにボールを保持して、相手ゴールに近づいても得点できないことがあり、だから番狂わせが起こりやすいのである。























