■チームを救った「何もないところ」からのシュート

 リオネル・メッシはいとも簡単に“石の輪”にボールを通す。

 しかも、ゴールの瞬間だけを見れば、メッシは超絶技巧など使っていない。

 アルジェリア戦の1点目は、かなり遠いところからシュートを決めたが、すごいスピードがあったわけでもない。ただただ、シュートを放つタイミングの妙で、相手GKが反応しにくいのだ。

 思い出したのが、カタール大会2戦目のメキシコ戦のメッシの先制ゴール。

 初戦でサウジアラビアにまさかの逆転負けを喫したアルゼンチンは、2戦目のメキシコ戦も一進一退の攻防で、攻撃も単調だった。このまま終わるのかとも思えたが、メッシがまさに「何もないところ」から突然シュートを放ってチームを救った(そして、そのまま優勝までつながった)。

 アルゼンチンのパス・サッカーは芸術領域に達しているが、それだけでは勝利は約束されてはいない。アルゼンチンが強いのは、まさに「前線に“石の輪”にボールを通す」天才がいるからなのだ。

「パス・サッカー」。それはチームプレーの究極だ。全員がサボることなくポジションを取り直し、集中を保ち続けるからこそ成り立つ。だが、最終的に“石の輪”にボールを通してチームに勝利をもたらすのは結局、天才の存在なのである。

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