■ドイツらしい、あか抜けなさ
この1970年大会では、イングランド代表が歌う『Back Home(バックホーム)』という曲もあった。ランナー2塁でレフト前にヒットを打たれた外野手に叫ぶ歌ではない。「故郷の人々のために、最後のホイッスルまで戦う」という内容で、ミュージックビデオには、タキシード、蝶ネクタイ姿の正装で録音に臨んだボビー・チャールトン、ボビー・ムーアなどのイングランド代表選手たちが歌う姿があった。自国開催の前回大会で初優勝を飾り、「連覇」への期待が満ち満ちていたイングランドだったが、開催国の警察が恐怖するほど多くのサポーターがメキシコまで行く時代ではなかったのである。
1974年大会では、開催国西ドイツ代表がやはりチーム全員で『Fussball ist Unser Leben(サッカーは我らが命)』が地元でよく売れた。ドイツらしいあか抜けないリズムとメロディー。録音に臨んだドイツ代表チームが、サッカーのユニフォームやトレーニングウエア姿ではなく、チロルハットに肩ひもと胸当てのついた革製の半ズボン(「レーダーホーゼン」と言うらしい)を着ているイメージで、少し笑った。
そして1990年ワールドカップで、「ワールドカップの歌」は「ローカルソング」から「大会公式ソング」の時代へと入るのである。


















