大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第189回「アメリカ・サッカー小史(下)」(2) チーム丸ごと引き抜きに反則まみれの日本遠征…、北米プロリーグの黒歴史の画像
現在ではリオネル・メッシもプレーするアメリカのプロサッカーリーグだが、かつては迷走を続けていた。撮影/中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、気になるワールドカップ開催国のサッカーについての続編。

■サッカーの魅力を目撃

 ヘルトのシュートがシュネリンガーの背中に当たったとき、シュネリンガーはオフサイドポジションにいたように見えた。今日のサッカーであれば、当然VARがチェックし、2-1のままイングランドの勝利で幕を閉じていたかもしれない。

 7月30日、アメリカ東部時間では、土曜日の昼前だった。このドラマチックな展開に、アメリカ人たちが魅せられた。そして延長前半11分、イングランドが挙げた3点目は、その後半世紀にもわたって議論の対象になるものだった。

 右からMFアランボールが突破、中央に送ったボールをワンコントロールしたハーストが右足を振り抜くと、ボールは激しくゴールバー下面を叩き、ピッチに落下して大きくはね上がった。このボールは西ドイツDFウェーバーがヘディングでバーの上にはじき出したが、線審トフィク・バフラモフ(当時ソ連、現在のアゼルバイジャン)が「ゴールイン」を主張、それを容れた主審ゴットフリート・ディーンスト(スイス)は得点を認めた。

 試合は延長終了直前にハーストが独走から4点目を決め、4-2でイングランドが勝つのだが、この日、「サッカー」という競技の底知れない魅力を、アメリカ人たちは目の当たりにしたのだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3