■日本サッカーにこれまでなかった「スタイル」
中村敬斗を初めて見たとき、「日本のサッカーにこれまでになかったスタイルの選手」という印象をもった。ボールをもつとリズミカルに跳ねるようにドリブルする。切り返しの切れ味、そして何よりもシュートのうまさが目立った。
オーストリアのLASKリンツでの活躍を認められ、2023年、22歳で日本代表にデビュー。その2試合目、6月のエルサルバドル戦で初ゴールを決めると、9月にはベルギーで行われたトルコ戦で2ゴール。2点目は右サイドを疾走したDF毎熊晟矢のパスをペナルティーエリア左で受けて相手DFが飛び込むところを、その股下を通してゴール左に流し込むという見事なものだったが、私には、1点目のほうが衝撃的だった。
前半28分、MF久保建英がゴール正面から強烈なシュート。GKがはじいたところを、いち早く反応した中村が詰めて右足インサイドキックで右隅に決めたのだが、中村は全力でこのボールに寄っており、しかも至近距離にGKが迫っていた。けっして簡単な場面ではなかった。しかし、リバウンドからキックまで1秒あるかないかの中で中村はGKの体勢をしっかり見極め、伸ばした足の届かないところにボールを送り込んだのだ。
これまでの日本のサッカーになかった個性とスタイルをもった中村の登場。それは、日本の「サッカー文化」が本物になってきた証拠だった。
個性あふれるプレースタイルと非凡なシュートの才能は順調に伸び、その3年後、中村は日本代表としてウェンブリーの舞台に立つ。3月31日。イングランドとの親善試合は、世界を驚かせた。


















