■美しさより「戦う集団」へ。変化するオランダのサッカー観

 1人少なかったものの、オランダのポゼッションはわずか29%。かつてほどオランダはポゼッション率にこだわらなくなったとは言え、攻撃サッカーの国・オランダとは思えぬほど低いポゼッション率だ。ヨハン・クライフが亡くなりちょうど10年、天国から彼の嘆きが聞こえてきそうだ。フットボール・インターナショナル誌のマルタイン・クラベンダム記者はオランダ人のサッカー観の変化を敏感に感じ取っている。

「今、オランダ人のサッカーの嗜好は二分化していると感じます。オランダのサッカーといえば攻撃的で魅力的なものと決まってましたが、最近の世代は戦うことに魅力を感じているようです。EURO2008でオランダはロシアに負けましたが、イタリア、フランスには素晴らしいサッカーで勝ったので私は満足です。10年W杯は準優勝しましたが、サッカーの内容に私は不満を覚えましたね。昨シーズン、アヤックスのファリオーリ監督(当時。現ポルト監督)は非常に守備的なサッカーでメディアや他チームのファンから批判されましたが、オランダリーグで2位という好成績を残し、アヤックスのサポーターは喜んでました」

 思い出すのは昨年2月、ELのアヤックス対ユニオン・サンジロワ戦。アウェーの第1レグを2-0で勝利したものの、ホームの第2レグでは25分にMFデイヴィ・クラーセンが退場。28分までに2点を失い、2試合合計がタイになって延長戦に突入した。前半途中までアヤックスの不甲斐ない戦いぶりに苛立っていた観客だが、アヤックスの体を張った守備に場内のテンションがどんどん高まっていき、延長戦でケネト・テイラー(現ラツィオ)が2試合合計3-2にするゴールを決めると、スタジアムは喜びの頂点に。アヤックスの標榜する美しい攻撃サッカーとはかけ離れたファイティング・フットボールだったが、戦うサッカーの魅力に酔いしれた夜だった。

 話をエクアドル戦に戻すと、退場者が出てからのオランダは焦れることなく“グルーピング(チーム全体が一塊になって守る戦術)”を採って、割り切って1-1のまま試合を終わらせつつ、2度、3度、鋭いカウンターを繰り出した。

 今の世代は14年W杯でルイ・ファン・ハールが率いたオランダの“5バックで守備を固めてアリエン・ロッベンのカウンター→W杯3位”という成功。そしてロビン・ファン・ペルシ(現フェイエノールト監督)のドルフィン・シュートで記憶に残るスペイン戦の5-1の勝利を知っている。74年W杯のトータルフットボールを肌感覚で知る指導者すら少なくなっているのだから、選手たちのサッカー勘がどんどん現代のものに上書きされていくのは、仕方のない一面がある。

 高く、速く、頑健なフィジカルを持つオランダのポルダー・カテナチオに、エクアドルは自慢のスピードを封じられてしまい、オランダの目論見通りに相手チームのストロングを中和させる結果となった。

つづく

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