■チームの危機が、日本人センターバックの未来を開くか

 だが皮肉な話だが、仮に降格という事態になれば話は変わる。主力流出の可能性が高まり、再編のスピードも加速する。そうなったとき、若く、伸びしろがあり、なおかつボールを扱えるセンターバックである高井には、思わぬチャンスが巡ってくるかもしれない。降格はクラブにとって大打撃だが、若手にとっては序列が動く局面でもある。高井の未来は、トッテナム全体の未来と奇妙なほど深く結びついている。

 とはいえ、ここで見失ってはいけないのは、クラブの土台そのものだ。

 トッテナムは2019年に開場したばかりの6万3000人収容の近代的なスタジアムを持つ。トレーニング施設もプレミアでトップクラス。長年ビッグ6の一角と見なされてきたクラブであり、戦力だけを見ても、本来は残留争いに沈むべき陣容ではない。

 英メディアも、現在の危機を「2部に降格した1977年以来の深刻な局面」として伝えているが、それは裏を返せば、このクラブが本来その位置にいるべきではないからこその衝撃でもある。デゼルビも、就任直後から「今はタイトルの話をするときではないが、トッテナムをプレミアの上位に定着するクラブにしたい」と語っている。

 ただ、現状のデゼルビ体制のトッテナムは、まだ応急処置の段階にある。戦術を本格的に落とし込むというよりも、まずはチームを立て直し、勝点を積み上げることが最優先の局面だ。そしてその先に、ようやく本格的な変革の時が待っている。

 そうした再構築のプロセスの中で、高井という日本人センターバックが思わぬ位置に浮上してくる可能性はある。もちろん、現時点ではあくまで候補のひとりに過ぎない。だが、足元の技術、前進力、スピード、そして若さという条件を考えれば、デゼルビサッカーの主軸に入り込むチャンスは十分にあるだろう。

 まず必要なのは、トッテナムがプレミアリーグに踏みとどまることだ。そのうえで、デゼルビが本格的に自分の色を植えつける夏を迎えられるか。さらに、その再編の中で高井がどんな評価を受けるのか。チームの未来と日本人DFの未来は、これから数カ月で静かに、しかし確実に交差していくことになる。

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