■ボールパーソンは「いなくなった」わけではない!

「ボールパーソン」はあくまで「補助係員」であり、心のなかはどうであっても、両チームに対して公平でなければならない。しかし現状では難しいと、2023−24シーズンにプレミアリーグは「ボールパーソン」が選手に直接ボールを渡すことを禁じ、ピッチの周囲に置かれたボールを選手自身が拾ってプレーを再開するという方法に切り替えたのである。翌年にはシステムを改定し、タッチライン沿いに4個ずつ(FIFAの最新のシステムより1個少ない)ゴール裏には2個ずつ、計12個のボールがピッチの周囲に置かれるようになった。

 ボールを抱えて立つ、あるいは椅子に座る「ボールパーソン」の姿は見られなくなった。しかし「ボールパーソン」がいなくなったわけではない。イングランドでは「ボールアシスタント」と呼ばれる「ボールパーソン」は、これまでどおりピッチの周囲に配置され、ピッチから出てきて転がってきたものを回収すると、すみやかに空いているコーンにセットするのである。

 プレミアリーグでは、「テクニカルエリア」に立つ監督が出てきたボールを拾って選手に返すことも禁じられており、思わず投げ返した監督が罰金を科されたこともある。それくらい厳密にやらないと、徹底できないということだろうか。

 この「新システム」、欧州の主要リーグでは、プレミアリーグのほかにはイタリアのセリエAで使っているぐらいだが、今年のワールドカップを通じて短期間のうちに世界中で採用されるようになる可能性は十分ある。プレーのスタイルや戦術だけでなく、試合の運営方法も、少しずつ変わっているのである。

 だが待てよ。少し考えれば、私が監督している女子チームも、外に出たボールを拾いに行く時間がもったいないので、練習試合のときにはゴールの中やピッチの周囲にボールを置くという形を、もう何十年も前からやっているではないか。ワールドカップが、やっと追いついてきたということか―。

PHOTO GALLERY ■【画像】北中米W杯からスタンダードになるであろう「マルチボール新システム」のポジショニング
  1. 1
  2. 2
  3. 3