サッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムで、日本代表がイングランドを沈めた。歴史的な大金星に日本中が沸いたが、この試合の「本当の価値」はスコアボードの数字だけには収まらない。名将トーマス・トゥヘル、ピッチで対峙した選手たち、そして辛口で知られる英メディアは、今の日本をどう見ていたのか――。英ロンドン駐在記者・田嶋コウスケ氏の現地レポートから見えてきたのは、世界の強豪が周到に対策し、それでもなお「ワールドクラス」とひれ伏すしかない、日本代表の圧倒的な進化だった。
■「崩すのは難しかった」ピッチ上の選手たちが味わった絶望
では実際、ピッチ上で日本と対峙したイングランドの選手たちは、どのように感じていたのか。
ここでも共通していたのは、日本を「非常に良いチーム」「ワールドカップで当たるレベルの相手」と捉えていたことだ。
FWとして先発したアンソニー・ゴードン(ニューカッスル)は「日本は非常に良いチームだった。まさにW杯で対戦するレベルの相手だった。非常に規律があり、素晴らしい守備ブロックを敷いてきた。崩すのが難しかった」と語っている。
途中出場でピッチに立ったFWジャレッド・ボーエン(ウェストハム)もまた、日本を「非常に組織的で、鍛えられているチームだ」と評価。「ミスを誘発させるように仕掛ける必要があったが、できなかった」と振り返った。彼らに共通していたのは「規律がある」「組織的」という表現であり、「日本戦は難しい試合になった」と敗戦を潔く認めている点だった。
元選手たちの評価に目を移すと、日本への称賛はさらに具体性を増す。中継を担当した英テレビ局ITVでは、試合後に元選手たちがディスカッションする場面があった。
司会者が「日本は素晴らしかった」と口火を切ると、元アーセナルFWのイアン・ライトは「優れたパフォーマンスだった。守備も攻撃も秀逸で、イングランドをしっかり仕留めた」と褒めた。
ここで注目したいのは、守備だけでなく攻撃も含めて完成度を認めていることだ。かつての日本は、強豪相手に善戦したとしても「粘り強く守った」「よく走った」といった言葉でまとめられることが少なくなかった。しかし、この試合の日本について、ライトは「得点場面では、守備に戻ってボールを奪い、スピードを生かして一気に仕掛けた。日本には、決定的なパスを送る力もある。特に中村敬斗のラストパスは素晴らしかった」と語っている。守備の回収から一気に前進し、最後の局面で質の高い判断と技術を見せたことが、高く評価されていたわけだ。
さらにライトは「チャンスも作っていたし、日本としては、これがW杯の本番でも1-0で勝ち切るような内容だった」と話した。ただ一方で、「日本はゴール前の最終判断で幾つかズレているところがあったが、それを正せば、あと数点は追加できていた可能性もある」と課題も口にした。





















