■こけら落としは大混乱

 こけら落としは1923年4月28日のFAカップ決勝。ボルトン・ワンダラーズとウェストハム・ユナイテッドの対戦だった。その直前3年間の決勝戦は、チェルシーFCが所有するスタンフォード・ブリッジ・スタジアムで行われていたが、満員にはならなかった。そのため、主催のイングランド協会(FA)は「新しいエンパイア・スタジアム(大英帝国スタジアム)でカップファイナルを見よう」という大規模なキャンペーンを展開した。

 ボルトンはマンチェスターの北に位置する町で、ロンドンに来るには数時間を要したが、それでも5000人のファンがやってきたと言われる。ウェストハムは東ロンドンのクラブである。その2クラブのファンだけでなく、FAのキャンペーンに突き動かされるように、春らんまんの朝、ロンドン市民が公共交通機関を使ってウェンブリーへ、ウェンブリーへと押しかけた。

 当時、まだ入場券で入場する形はできておらず、入場ゲートで現金を支払って入場するシステムだった。当然「前売り」もない。キックオフは午後3時に予定されていた。入場は11時半に始められ、最初は整然としていたが、あまりに多くのファンが詰めかけたため、警察は午後1時45分にゲートの閉鎖を命じた。しかしスタジアムへ押しかける人々で戻ることもできなくなったファンはその30分後にはゲートを突破し、スタジアム内に侵入した。

 当然観客席には入れず、ファンはゴール裏のスペースを埋め、タッチライン外を埋め、やがてピッチも埋め始めた。しかしここで試合を中止にしたら暴動になりかねない。両クラブに対し、FAはこの試合を親善試合とし、カップファイナルは日をあらためて行うことを通告し、試合をするよう要請した。

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