■マラカナンの悲劇
大騒ぎしていたスタンドが静寂に包まれる。そしてウルグアイが攻勢に出る。後半34分、ブラジルのFKをはね返したところから始まったウルグアイのカウンターアタックで、同点ゴールのアシストをした右ウイングのギッジャが抜け出す。中央には再びスキアフィーノと、もうひとりオスカル・ミゲスが走り込む。13分前の同点ゴールとまったく同じ状況に、ブラジルGKバルボーザはギッジャがボールを蹴ろうとする瞬間、クロスを防ごうと前に出る。
だがギッジャの選択は「シュート」だった。角度のないところから右足を振り抜き、ニアポストを狙った。逆をつかれたバルボーザはわずかに反応が遅れ、彼の指先をはじいたボールはゴールに吸い込まれる。観客席は凍りついたようになる。
残り11分、ブラジルは猛攻をかけ、スタンドの観客も勇気を取り戻して大声援を送る。アディショナルタイムに入って、ブラジルが右CKを獲得する。これが最後のチャンスだ。しかしフリアッサのキックがファーポストに流れた瞬間、イングランドのジョージ・リーダー主審が終了のホイッスル。スタンドは三たび静寂に包まれ、観客はただ頭を抱え、コンクリート打ちっぱなしのスタンドに座り込んだ。
「マラカナンの悲劇(ブラジルでは『マラカナッソ』と言う)」である。当時5200万人と言われていたブラジル国民が悲嘆に暮れた。ブラジルにとって、当時は、永遠に消えない傷のように思われた…。だが、「カナリアの物語」はここから始まるのである。
「あの白いユニフォームが不吉なんだ。ユニフォームを変えるべきだ」








