■交代選手が得点に絡んでの大逆転!!

 この試合最初の交代となる60分に、小林監督はMF姫野誠を送り出した。2列目の左サイドで起用した。8月にトップチームに追加登録されたこの17歳は、それまで一度もリーグ戦に出場していない。

 姫野は11月開催のU―17ワールドカップに出場したので、その前後も含めてメンバー入りをさせられなかったところはあったのだろう。さらに言えば、この日は左MFの椿直起が、最終節のケガでメンバー外だった。そうした事情もあって、攻撃の複数ポジションに柔軟に適応できる姫野を、交代カードに加えたと考えられる。

 それにしても、プレーオフ準決勝である。それまでJリーグのピッチに立ったことのない高校2年生を、3点を追いかける展開で送り出す。姫野はメンタルがタフだと聞くが、大胆かつリスクのある決断だったに違いない。

 果たして、この起用が試合の流れを呼び込む。姫野は出場直後にワンツーでペナルティエリア内左へ侵入し、決定的なシュートを放った。

 71分にFWカルリーニョス・ジュニオが決めたチームの1点目は、姫野投入で左サイドから右サイドへポジションを移したイサカ・ゼインの仕掛けがきっかけとなっている。交代の効果は、こうしたところにも表われた。

 1対3とした直後の73分、小林監督は3枚替えをした。ダブルボランチの一角を担う田口泰士、得点を決めたばかりのカルリーニョス・ジュニオ、イサカ・ゼインを下げてMF品田愛斗、FW呉屋大翔、FW米倉恒貴を送り出す。攻撃のギアをさらに上げた。

 この交代も試合を動かすのだ。77分、敵陣右サイドからのスローインを品田が受け、右ポケット付近まで侵入してクロスを入れる。これがRB大宮守備陣に窮屈なクリアを強いることとなり、MFエドゥアルドがペナルティエリアすぐ外から強烈な右足ミドルを突き刺すことにつながったのだった。

 そして、3点目は姫野である。CB鈴木大輔がヘディングでクリアしたボールを、2トップに入った呉屋がヘッドで後方へ流す。左MFの米倉がワンタッチで右前へ送ると、17歳が猛然と走り込む。胸コントロールでボールを前へ押し出すと、DFの前へ身体を潜り込ませてシュート態勢を作り、GKの頭上を破る左足ループを決めてみせた。

 フクアリの熱狂は最高潮に達した。87分には右CKからCB河野貴志が、逆転のヘディングシュートを突き刺す。これで勝負あり、だった。

 姫野、品田、呉屋、米倉と、小林監督が切った交代カードがしっかりと得点に絡んだ。ラスト20分からの大逆転劇で4対3の勝利を飾った「フクアリの歓喜」は、指揮官の強い決断が生み出したものだった。

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