■海に面する「日本の工業地帯」

 1974年のヨーロッパ旅行の途中でリヒテンシュタイン公国という小さな国を見たくなって、オーストリアからスイスに向かう鉄道を途中下車して同国の首都ファドーツに行ってみたことがありますが、スイスとリヒテンシュタインの国境を流れていたライン川の上流は日本の川によく似た河川敷の光景でした。

 ライン川やドナウ川、ヴォルガ川といった大河を見ていると、大型の船が頻繁に行き来しています。ライン川の例で言えば、オランダのロッテルダムからかなり大きな貨物船がスイスまでさかのぼって行けるのです。

 ですから、ヨーロッパではドイツのルール工業地帯のように、内陸にも工業地帯が存在します。それに対して、日本の川では大型船は航行できないので原材料や製品を運ぶことができませんから、日本の工業地帯はどこも海に面しています。

 10月に「蹴球放浪記」(第286回)でロシアのエカテリンブルクのことを書きましたが、エカテリンブルクは本当に大陸の内陸の奥の奥にあります。しかし、ロシア奥地のヴォルガ川流域はロシアの工業の礎となった地域なのです。そして、ヴォルガ沿岸の工場経営者や労働者は早くから西欧生まれの新しいスポーツ、フットボールに取り組んできました。

(2)へ続く
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