サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、地下鉄の駅とサッカーの深~い関係について。
■スタジアム誕生「30年前に開業した」直結駅
スタジアムに直結した駅といえば、ロンドン地下鉄の「ウェンブリー・パーク駅」だろう。ジュビリー・ラインとメトロポリタン・ラインの2線が乗り入れている。この駅を降りると、正面600メートルに巨大なアーチをかけたウェンブリー・スタジアムが見え、階段を降りると車が高速で行き交う大通りの下をくぐってスタジアムまで真っ直ぐな幅40メートルもの歩道が続いている。
だが「ウェンブリー・パーク駅」は、「ウェンブリー・スタジアムの駅」として名づけられたものではない。ウェンブリー・スタジアムの誕生は1923年。ところが「ウェンブリー・パーク駅」は、その30年も前、1893年に開業しているのである。
1881年、メトロポリタン鉄道の会長を務めていたエドワード・ワトキンがここに広大な土地を購入し、ボート池、庭園、クリケット場、サッカー場などを備えたアミューズメントパークの建設に着手した。1889年にパリに高さ330メートルのエッフェル塔が完成すると、ワトキンはそれを超える358メートルの鉄骨タワーを計画し、建設を始めた。広大なウェンブリー・パークは1894年に開業し、建設中のタワー人気もあって多くの人を集めた。
1895年、タワーは第1段階が完成し、47メートルの高さに達したが、ワトキンが健康を害して引退、地盤がタワーを建てるには不安定であることも判明してそこで工事はストップ、9年間放置された後、1904年から1907年にかけて破壊された。そして1924年の大英帝国博覧会に向けてその跡地に建てられたのが、ウェンブリー・スタジアムなのである。








