■「我慢比べ」の結末は…

 前半を0対0で終えた試合は、「我慢比べ」の様相を呈していく。

 どちらもDFラインから前線へのロングボールを攻撃のきっかけとすることが多く、両チームのボランチが高い確率でセカンドボールを確保することで、相手にショートカウンターを許さない。千葉で言えば鈴木大輔河野貴志の両CBが跳ね返したボールを、田口泰士エドゥアルドがポジショニング良く回収していった。

 J1昇格候補による6ポイントマッチだが、首位の水戸はドローでも千葉との勝点差を保つことができる。勝点3がより必要なのは、追いかける立場の千葉だっただろう。

 小林慶行監督は後半アディショナルタイムに、残していた2枚の交代カードを切る。FW米倉恒貴とFW呉屋大翔を送り出し、直後に米倉の右足シュートがバーを叩く。千葉にとってはこの日最大のチャンスであり、それが得点につながらなかったことで、この日は運に恵まれなかったとなってもおかしくはない。

 だが、チャンスはなおも巡ってくるのだ。アディショナルタイムの左CKが、相手GKのパンチングでクリアされる。これがゴール前の競り合いに参加せず、ペナルティエリアすぐ外でフリーになっていたMF杉山直宏へわたる。胸コントロールで利き足とは逆の右足へ持ち出した杉山は、力みのないフォームからゴールネットを揺らす。無駄な力をまったく感じさせなかったのは、逆足だからだったのだろう。

 この一撃で勝利を手繰り寄せた千葉は、順位こそ3位のままだが2位に転落した水戸との勝点差を「3」に縮めた。アディショナルタイムのドラマは、最終的な結末にどのような影響をもたらすのだろうか──。

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